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エンデュミオン (乙女系ヤンデレ風な妄想の話) 

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

彼女は見知らぬ場所で目を覚ました。
「あ、起きた?」
青年の青い瞳が、間近でこちらを覗き込んでいる。
次の瞬間、彼女は気づいた。
毛皮の感触が、直に首から下の素肌に触れ、
頭上の両手と、毛皮に覆われて見えない両足首が、
金属製の枷で固められている。
覚えのない寝台の上、声は出せるが口は布で塞がれていた。
恐慌をきたす彼女に、青年が残念そうに微笑む。
「ああ、やっぱりまた忘れたんだね。」
黒い髪と青い瞳に、見覚えはない。
「君は目覚める度に忘れて大騒ぎするから、仕方ないんだよ。」
何が?枷?どうしよう?殺される?
「とりあえず落ち着いて、ゆっくり息して。
 また最初から話してあげるから。」
誘拐?拉致された?
「君がここに来たのは15年前。3年ごとに起こしてるから、
 この話をするのはもう5回目だよ。」
15年?何のこと?人違い?
「つまり君が僕の恋人になってから15年ってこと。
 もっともほとんどの時間を仮死状態でいるから、
 君にはほんの何日かだろうけど。
 こんなことができるのも、ディアナさまのおかげなんだ。
 ああ、やっぱり目を開けてるっていいな。キスさせて。」
頬に、額に、瞼に、鼻先に、降るキスを、避ける方法はない。
「唇にもしたいけど、後でね。」

機嫌の良い声に、混乱と恐怖で全身が震える。
「僕が怖い?なんで?こんなにしっかり君の面倒を見てるのに?
 眠ってる君は逃げないから枷はしないし、毎日きれいに洗って
 着せ替えて、髪も整えるし、寝台も清潔にしてる。
 もちろん勝手に悪さなんてしない、ただ眺めて、
 時々抱きしめて眠るだけ。
 ディアナさまが僕にそうしていたように。
 今服を着てないのは、君が起きる度に逃げようとするせいだよ。
 でもやっぱり息苦しそうだから、騒がないなら
 猿轡は外してあげるけど。」
彼女は何度も頷いた。
「本当かな。」
急に冷ややかに潜められた声音に、恐怖心を煽られる。
くり返し頷くと、青年は耳元に唇を寄せ、息を吹き込むように囁いた。
「嘘だったら、いますぐ犯すよ。」
震えながら、もう一度頷いた。
「ごめん。嘘だから、泣かないで。」
そっと頭を持ち上げ、うなじの結び目を解く。
「君が好きだから、ついいじめたくなったんだ。
 そうしておかないとすぐに死んでしまうから仕方ないけど、
 君が眠ってる間、僕がどんなに淋しいか
 君には感じられないだろう。
 だから、許してくれるかな。」
そう言われても、返事をするのも恐ろしい。
答えない唇を、青年の指先が辿る。
息を呑むと、指が口内に入り込み、粘膜を撫でた。
「…あったかい」
誘われたように、柔らかく口づけられる。
濡れた指先が、首筋から肩へ、胸元へ這い落ちるのを感じ、
全身がわなないた。
「…好きだよ。だから、心配しないで。酷いことはしない。」
どうしても離れがたい、というように、
頬や首筋や唇に、何度も唇を押し付けて、切なげに見つめる。

「これを見て。」
頭を撫で、髪を指先に巻きつけながら、青年が写真を取り出した。
ランドセルで校門前に立つ娘と両親が、幸せそうに笑っている。
一瞬、写っているのが誰だかわからなかった。
けれどもすぐに気づく。
「これ、な、に」
「分かるだろう?君の元コイビトは、今この人のオットで、
 この子のオトウサン。彼、老けたと思わない?
 人間ってこんなにすぐ変わるんだから、つまらないね。
それで、これが君。」
差し出された手鏡に映るのは、記憶のままの自分。
「ほらこれも。これでもいろいろ考えたんだよ。
 君が一番理解しやすい方法を。」
目の前にかざされた新聞には、信じられない日付が印刷されていた。
あまりのことに心臓が大きく波立ち、呼吸があがる。
「そんなに驚かなくても。」
青年は寝台に腰掛けると、彼女の上体を優しく抱え起こし、
落ちかけた毛皮を引き上げつつ、自分の胸にもたせかけた。
「僕が君を初めて見たのは、小さな公園だった。
 君はクラクラするほどいい匂いがしていて、僕は思わず君に
 ついて行ったんだ。
 それから毎日君を見てた。いつでも、どこでも。
 それで君を迎えに行ったんだけど、窓から見てみたらよく眠っていたから、
 起こすのもかわいそうだと思って、
 そっと君の部屋に入って、眠ってる君をここに連れてきたんだ。」
…信じられない、何もかも。

「飲んで。おいしいよ。」
口元に寄せられたグラスからはワインの匂いがした。
ためらいを見せると、優しく顎をすくわれ、顔をのぞき込まれる。
「ダメだよ。僕に逆らっちゃ。
 お仕置きされたくないだろう?」
思わずぎゅっと目を閉じた。
「言う事聞けたら、枷を外してあげるから。ほら。」
おそるおそる、グラスに口を付ける。
「おいしい?」
味なんて分からない。
彼はグラスを傾け残らず流し込むと、軽く咳き込んだ彼女の
うなじや耳にキスをする。
「思い出さないかな?前にも飲んだよ。」
抱きしめられ、あちこちにキスを浴びていると、アルコールの作用か、
次第に強ばりが解け、心拍数が上がり始める。
「知ってる?ネクタルやアムブロシアは、
 プロセルピナやエウリュディケが食べた冥界のザクロと
 同じ働きをするんだよ。
 イヴが食べたエデンのリンゴ、イチジクだったかな?
 この国では、イザナミの黄泉戸喫(よもつへぐい)に、
 非時香木実(ときじくのかぐのこのみ)も同じ。一度口にしたら、
 もう後には戻れない。
 もっともネクタルには、別の効果もあるんだけど…。」
酩酊し始める意識と裏腹に、体の感覚が研ぎ澄まされてくる。
「好きだよ。好き。大好き。」
徐々に熱を増すキスにも、言葉にも、抗うすべもない。
「安心して。君が望まない限り、これ以上はしないから。
 でも君の体、すごく熱い。
 少し量が多すぎたのかな。ごめんね。
 ちょっと辛いだろうけど、我慢してね。」
枷はもう外れているのに、真綿で縛られてでもいるようで、
肌を滑る毛皮の感触にさえ、身震いしてしまう。
「愛してる。永遠に、一緒にいよう…」


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アラクネ (乙女系妄想話)

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

彼女がその廃墟を見つけたのは偶然だった。
出張からの帰り、月が昇りはじめた山間の、
静かな道路を走っていた。
こんな所に?
一重咲きの赤い野バラが、一面に咲き誇っていた。
思わず車を止める。
1車線だけの国道は通る車も滅多になく、
今は彼女しかいない。
崩れかけた塀が、長く続いている。
敷地の奥に見えるのは、古い、病院だろうか?
野バラは、道路脇の塀からはみ出して咲きこぼれ、
奥の建物まで続いていた。
壊れかけた塀の外側で咲く、その一輪に手を伸ばす。
と、バラが、塀の内側へ動いた。
ように見えた、のだろうか?
彼女は思わずそれを追い、
塀の内側の茂みの方へ手を伸ばした。

すると、いきなりその手が強く引っ張られる。
声を上げて、野バラの中へ倒れ込んだ。
刺にあちこち刺されながら、夢中で起き上がろうとする。
「誰?」
その頭上に降ってきた声は、少年のものだ。
彼女は息がとまるほど驚いた。
目の前に立っている。さっきまで影もなかったのに。
か細く尖った、バラの刺にも似た声音。
金の髪が、昇る月のようだと思った。
名を答え、勝手に立ち入ったことを詫びると、
少年がひっそりと笑った。
「そんなこと、どうでもいい。」
姿は少年だが、なぜか子供には見えない。
まして学生などでは。
浮き世離れしたその風貌は、およそ社会とは無縁に思える。
月色の髪も、硝子みたいに光る眼も。
「どうしてこんな所に?」
彼の質問は、そのまま彼女の疑問だった。
仕事帰りだという答えを、彼はまたわらう。
野バラのように赤く、傷口のように薄い唇で。
「答えじゃない。どうでもいいけど。」
彼女が繰り返した同じ質問に、彼が今度は少し嬉しそうに答える。
「待っている。主の帰りを。」

宵闇が、次第に濃くなる。
片言のように、耳慣れない話し方をする少年。
その姿が、月とともに輝きを増し、
瞳が、花園とともに闇を深める。
すーっと大きく息を吸い、彼は重い瞬きをした。
「匂いがする。それ、くれる?」
なんのことかわからない彼女の腕を取り、
少年は刺の掻き傷に唇を寄せた。
その舌が、肌をかき分けるように傷を舐める。
直後に走った、鋭い痛み。
思わず手を引っ張った。
すると少年は焦れたように、彼女の肩ごと両手で抱え込んだ。
「まだ離さない。もっと欲しい」
何の幻だろう。この少年には、牙がある。
瞳も今は、緑色に光って見える。
けれどこの痛みは、幻じゃない。
右腕に幾つも穴を開ける、この痛みは。
皮膚を破り、穿った穴に細めた舌をねじ込み、
血を吸い出し、溢れた流れを広げた舌でゆっくりと辿る。
同じ傷を何度もえぐる、熱い痛みに身を捩り、
体を離そうと彼の背を叩く、彼女の抵抗を意にも介さず。
やがて彼女が暴れる力をなくした頃、
少年は深い吐息とともに、ようやく唇を離す。
「…ああ、この血は、苦い。」
血に濡れた腕が、傷と鬱血であちこち赤紫に変色していた。
「主に捧げるには、相応しくない。」
言いながら彼女の顔を振り返り、痛みと怯えに流れた涙を
彼は肩越しに舐め上げた。
「だから僕が、全部飲んでしまおう。」

不意に緩んだ腕を振り払い、彼女は逃げ出す。
けれど数歩も行かないうちに、しなう野ばらの枝に
絡め取られて身動きできなくなる。
いつの間に、これほど奥深くまで来ていたのか。
塀も道路も、とても遠い。そしてあの廃墟が、すぐ近くにある。
「そこは主を迎える巣。」
背後に覆いかぶさる声に、抱き込まれる温度に、
知らずひきつった悲鳴が漏れる。
「ある、じ…」
ようやく絞り出した彼女の声に、少年はまた少し嬉しそうに笑う。
「そう、主。女神の怒りに身を灼かれ、
 蜘蛛に化身した哀れな女。
 もうすぐ、あの銀の月光に糸を掛けて、
 この廃園に降りてくる。
 …滴る獲物の、血に焦がれて……」
少年は彼女のうなじに顔を埋めて囁いた。
「でも、この血は苦いから、主には捧げない。
 苦くて、温かくて、濃密な味がする…。
 こんな血は……」
再び、そこに牙がめり込む。
声にならない悲鳴が漏れ、少年は一度、口を離した。
「しーっ。大丈夫。痛くない。」
殊更じっとりと、竦み上がったうなじを舐める。
そこからじわりと競りあがり、
どろりと背筋を流れ落ちる熱っぽい甘さ。
「ほら。もう、痛くない。」
同じ穴にもう一度牙を沈められても、
傷口を舌でえぐられても、痛みを感じない。
それこそが恐ろしいのに、もう手足が思うほど動かない。
「ここは僕の巣の中。
 足掻いて無駄に血を流すより、
 じっとして、いて?」
牙に裂かれた傷口の、引き攣れる血肉が恍惚を誘い、
やがて意識は緩慢に痺れ、戦慄と快楽の狭間をさまよう。
「…まだ離さない。もっと、欲しい…」
彼女を抱き上げ、少年は廃墟の中へ消えた。
廃園を覆う花闇のように、ひっそりと嗤いながら。



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ヴルコラカス (乙女系妄想の話)

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

「良かった。気がつきましたね。」
彼女は驚いて飛び起きた。
「急に動かないほうがいいですよ。」
明るいグレーのスーツを着た男性が、穏やかに言う。
「貧血みたいだから。」
カップを差し出され、なんとなく受け取りながら、彼女は周囲を見回した。
「駅員室ですよ。覚えてませんか?君はホームで倒れたんですよ。」
礼を言い、カップに口をつけた。
「自販機にあったかいのがなかったから、駅員さんが作ってくれました。
 はちみつレモンが貧血患者の定番らしい。気分はどうですか?」
少し頭がふらふらしていたが、大丈夫だと答えた。
「良かった。さすがに朝までここにいるわけにはいかないから、
 終電までに気がつかなければ、
 私の家に拐って行ってしまうところでしたよ。」

いたずらっぽく笑われて、彼女は記憶を反芻する。
途端に顔を赤らめた。
駅のホームで、目の前の男性に告白したのだ。
「家まで送っていきますよ。」
咄嗟に首を振ると、男性が眉尻を下げる。
「どうして?さっきは好きだと言ってくれたのに、
 私はもう振られるんですか?」
言葉につまると、彼はゆっくり立ち上がった。
「自分に告白してくれた人を、置き去りにしたくありませんから。」
そう言って、彼は駅員に挨拶を済ませ、
彼女を促して歩き出す。
駅を出てまもなく、言いにくそうに彼が切り出した。
「聞いてもいいかな?」
背中に添えられた手のひらの温度が、彼女の鼓動を波立たせる。
「どうして私に?私は君の倍も年取ってるし、
 君に何かしてあげたこともありませんよ。」
それどころか、口を聞いたことさえなかった。
ただいつも、同じ車両で見かけていただけの人。
それでも惹かれたのだ。どうしようもなく。
その目に、仕草に、雰囲気に。
今隣を歩いていることが、信じられないほどに。

説明できないと口ごもると、彼は口元だけで笑った。
「なら教えてあげましょうか。
 “どことなく、他の誰とも違う何かを感じた”?」
耳元に囁かれ、反射的に離れようとした腕を掴まれる。
思いがけない強さに、彼女は身を竦ませた。
その反応を見て、彼が力を抜く。
「失礼。バレているのかどうか、
 確かめたかったんです。」
何を、と言いかけた瞬間、何か硬いものを踏んでバランスを崩した。
短い悲鳴を上げた彼女を彼は卒なく支えたが、
それより先に足首を痛めてしまったようだ。
男性は、彼女を近くのベンチに座らせる。
彼女の足元に膝をつき、サンダルを脱がせてそっと触れた。
踏んだのは、どうやらコンクリートの破片だったらしい。
「少し捻ってますね。申し訳ない。夜道で体調も悪いんだから、
 私がもっと気を付けてあげればよかったね。
 これ、後で腫れそうだ。」
言いながら足首を撫でられ、一瞬息を詰めると、
彼は妖しく笑んで見つめてくる。
じっと長く見つめられ、言葉が出ない。
そのまま金縛りのように固まってしまうと、急に足首を持ち上げられた。
慌ててスカートを押さえると、
彼は目もそらさずに、痛む箇所を舐め上げる。
背筋が震えて必死に足を離そうとすると、
反対の足首も掴んで地面から浮かされ、立つことができない。
瞬きもせず、視線を彼女に据えたまま、
彼は足に舌を這わせ、軽く歯を立て、指を一本ずつ吸い上げる。
もう泣いてしまいそうで、彼女はぎゅっと目を閉じた。
すると今度は反対の足首を、舌でたどられる。
「…こんなふうに足を上げなくても、
 君の血の匂いはこのスカートの下からずっと私に届いていた。
 貧血を起こしたのも、そのせいでしょう?」
顔がかぁっと熱くなって、思わず目を開けた、
その瞬間に気づいた。
彼の眼が、赤い。その瞳孔が、動物のように光っている。
本能的に彼女は感じた。これは人間の眼ではないと。

叫びかけた唇を指一本で塞ぎ、顔を寄せられる。
「困るんですよ、君みたいな人は。変に敏くて。
 これでももうずっと人間として暮らしてるんだから。
 でもせっかく私を好きになってくれたんだから、
 ちゃんと、してあげたい。」
怪我の痛みが、引いている。
というより、感覚がなくなっている、両足とも。
ただ温かさだけが、ぼんやりと残っていた。
「ちゃんと、気持ち良く。怖さなんて、感じないように。」
乞うように、誘うように、囁く唇が頬をかすめる。
耳朶をついばみ、口元を舐め、首筋に痛いほど口付ける。
「気持ちよくて、仕方がないように。それ以外、何も考えられないように。
 骨の髄まで快楽で埋め尽くしてあげます。
 そうしたら、人間は逆らわなくなる。」
熱い吐息が、体に染み込む。
すっぽりと抱き込まれ、指先が膝から大腿へ這い、
脇腹をなで上げ、胸元へ滑る。
「約束します。
 君が泣きやめないほどの快楽を、
 いつまでも何度でも、繰り返してあげます。
 何日でも、ずっと。君が耐え切れなくなるまで。
 自分の意思では身動きもできなくなって、
 ただ快感に喘ぎひくつき、震えることしかできなくなるまで。」
粟立つ肌を鼻先で撫でられ、耳元に舌舐りが響く。
「いま君から漂う発情したメスの匂いは、快楽にとても相応しい。
 君は失神するまで感じて、また強い快感で目を覚ます。
 小さな死を、何度も何度も繰り返し、
 やがて君は言う。」
猛毒のように、耳から流れ込み頭を犯す、獣の声。
「“このまま、死んでもいい”。
 そうしたら、気持ちいいまま食べてあげますよ。
 血も肉も骨も、なんにも残さないように。
 …じっくり時間をかけてね。」



 
 
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プロフィール

シカピ

Author:シカピ
数年前、とある美声にひと耳惚れし、
そのまま声フェチに、そして
ヤンデレに行き着きました。
同じ道を通った人、いますか?

真冬以外は年中花粉症です。

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