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預言者は語る(黄金の太陽24回目)

テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

<ネツァーク帝国ドゥラスロール公国間恒久相互不可侵条約交渉担当
特命全権大使麾下、陸軍国境方面軍第一師団内第二歩兵部隊隊長補佐役
仕官バルド・マーニテュール待皇より、我が皇帝アツィルナ・マルクト陛下に
謹んでご報告申し上げます。

かねてより定めし日時に従い、二国間条約の調印およびオーミ副王と
その従者一名の引き渡しが、国境線上の天幕にて行われました。
こちら側より天幕内に立ち入りを許可されましたのは
各部隊長以上級者、合計二十名。
先方からは新ビァーゼ大公、旧バーレイグ大公のみにて、全隊は両国軍とも
天幕より百歩の距離に控えて引渡しが完了。
しかし、ドゥラスロール二大公が天幕を離れ自軍に合流、国境を越えました後、
我々は天幕の異変に気づき、部下五人と共に立ち入りましたところ、
特命全権大使と各部隊長を含む二十名全員の死亡と、オーミ副王とその従者の
不在を確認するに至りました。
遺体の状態から、二十名は全て素手、もしくは剣による一撃にて絶命したと
みられ、天幕内外の状況から、オーミ副王の従者による犯行と思われます。
すぐさま追跡隊を編成すべく天幕外に出ますと、我が第一および第二師団、
合わせて千五百名は全て昏倒、多くは死亡しており、絶命寸前であった
友軍の一人から、灰色の髪の見慣れぬ兵士が、故郷のまじないと称して
黄色い粉末を風に乗せて撒いたとの証言を得た由にございます。
正体不明の有毒物により生存者は私を含む十八名のみとなり、
うち十五名がオーミ副王と従者の捜索にあたっておりますが、
現在のところ有力な手がかりは得られておりません。
以上のことを取り急ぎお伝えし、陛下のご指示をお待ちしております。

国境守備隊宿舎にて。バルド・マーニテュール>


ネツァーク女帝アツィルナ・マルクトの元へ届けられた第一の手紙。
それは彼女を戦慄させた。
20人をたった一人で殺害したオーミ副王の従者。
アツィルナの瞼に、ミヅァスートの門で見た銀色の髪の男が即座に浮かぶ。
オースィラとガラドラル。二人の眼差しから容易に見て取れる三角関係の
中心にいた男。
その顔は死の静寂に似た冷ややかさを湛えていた。
そして彼が行った殺戮と逃亡を補助し、二個師団を壊滅させた
灰色の髪は、ケセド・アマルー。
あの時の灰色狼だ。アツィルナは直感する。
皇子オルグのエウリア宮を襲撃してオースィラを奪い、宮を全焼させた
盗賊団。
幸いオルグ皇子は愛人の家へ出向いていて事なきを得たが、それも
あの2人の仕業に違いない。
この2つの事件にドゥラスロール大公の意思や手助けが生きていたとは
アツィルナは思わない。
全滅寸前の反乱軍にそんな余裕はないだろう。ギースルなき後、
烏合の衆に形をつけてオースィラを送ってこられただけでも上々というもの。
にもかかわらず何の助力もない中でこれだけのことをやってのけた。
しかもたった二人で。
とんでもない伏兵だ。
もしかするとまずい敵を作ってしまったのではないか。
ライゾ王は愚かではないが、若い。
あの二人を、ようやく成人したばかりの王に、腹の中で飼い慣らせというのは
無理難題というものだろう。
アツィルナは矢のような速さで追跡隊を作り、それを4つの経路に分けて
散開捜索させる。
しかしその結果は惨憺たるものだった。


<海軍南方方面軍トッグ・イールズ提督麾下、オーミ副王及び従者の追跡捕獲
特別編成部隊内第一班マクール経路探索隊隊長エンツォ・デュブロー伺皇より、
我が皇帝アツィルナ・マルクト陛下に謹んでご報告申し上げます。

オーミ副王とその従者は、マクール領旧マルデル内最北の港で小型の軍船を購入し、
マクール人の乗員3名と出港。
針路はオーミ王国南門の大小いずれかを指していると思われ、第一班は同型の
軍船を借り入れて追跡を進めました。
11日間の追尾航行の後、トレノエイル岬を臨むオーミの大小南門の中間点、
エギルとイアブールの各港から4スケッキルの沿岸にて
副王の船の櫂を捉えた次第でございます。
すぐさま白兵戦の構えをもって乗り移らんとしたところ、副王と従者は軍船を
放棄、小艇を降ろし、岬の崖下にうがたれた洞窟へ漕ぎいれて逃走。
当方も小艇にて追いましたが、洞窟内に僅かに入った位置で
突如として水面に穴が開き、副王の小艇は海水と共に穴へ吸い込まれ
姿を消しました。
荒唐無稽な事実によって捕獲に失敗、行方を見失いました失態を
ご報告せねばならないことを心よりお詫び申し上げます。
一班総員にて水面下と水底を探るも、艇の破片や櫂、また入り口の痕跡など
発見には至らず、真に面目次第もなく陛下のご裁定をお待ちするものであります。

ダラテナ諸島南端エナン島にて。エンツォ・デュブロー>


海に開いた穴。
それはライゾ王が帰国後すぐに集めた水路整備技師や神殿の建築技師、
港や船の設計士などの技術者たちに作らせた仕掛けだった。
海底に沈んだ鍾乳洞は、ライゾ自身が神殿に帰還した折、沈没した船から
逃れてトレノエイル岬へ泳ぎ着いた時に発見したものだ。
引き潮に排水される鍾乳洞の空間。そのさらに下を流れる水音。
ライゾの推測は当たっていた。
水底に開閉用の弁をつけ、そこから繋がる地下川へ逃れて、
安全な場所で地上へ出る。
その出口へ迎えを遣っておけば、彼らは最短距離で王都へ戻れる。
水底の弁の開閉方法は、ヴァルキールへ宛てたフギンに託しておいた。
飽くまで追っ手を振り切れなかった時の最終手段として作ったそれは
現在も工事中で、ライゾは最終的に神殿のフラールまで繋げる
計画だった。
当初からの予定ではなかったが、雇った工事人が
一度掘って埋め戻した痕跡を地下川で発見し、掘り起こしてみると
それは王都グリームニルに向かって延びていたからだ。
時間と費用はかかるだろうが、作っておけば何かの役に立つことも
あるかもしれない。
ライゾは財務官ヤルルの反対を押し切って、秘密裏の工事を始めたのだ。
それが早速に役立ったので、ようやく諦めの悪かったヤルルも口を噤んだ。
そうして妹が無事に帰りついた翌日、ライゾはアツィルナ・マルクトへの
手紙をしたため、金貨と宝飾品、織物などを船に積み、
使者をつけてネツァークへ向かわせた。


<オーミ王国第84代国王ライゾ・ロヴァルギス・ミュゼファンより
我が皇帝アツィルナ・マルクト陛下に申し上げます。

先だっての約定に基づき、ご請求の金貨10万サーラを献上いたします。
期日100日を尊守せんがため、櫃に刻まれし紋章、有翼の蛇を削り取る暇が
ございませんでしたこと、ご無礼ながらご容赦くださいませ。
また添えて献上いたしましたるいくらかの品物は、
このほど帰国いたしました我が妹オースィラに、陛下がくだされました
ご厚遇への謝意でありますれば、些少ながらお納めいただければ幸いにございます。
次回一年後の奉献時には、是非とも我が国へ陛下のご臨幸をいただき
私の心からの歓待をお受けいただければと存じます。
なお、これらの品をお納めいただけない場合には早々にご連絡を。

グリームニルにて。陛下のしもべ、ライゾ・ロヴァルギス・ミュゼファン>


無論、有翼の蛇がベルカナの新国王となったガラドラル・バレッジの
紋章であることは周知。
また支払った金貨はそのままベルカナ貨幣、献上品もベルカナ商船からの
略奪品であることはいうまでもなく、宝飾品もベルカナ細工なら
織物はベルカナ貴族の家紋を地模様に織り出してあるという
念の入れようだった。
アツィルナとしても、オーミによる近海での海賊行為の増加や、
10万サーラの献金期日の延長、あるいは減額の申し入れぐらいは予想の範疇だったが、
まさか値切りもせずここまで露骨なやり方でくるとは、実に有難くないパターンだ。
それもこれも、あの銀色の死神のせいか。
あの男が、王女を横目に娼婦よろしくガラドラルに身を売った、その代償は
ベルカナ一国だったというわけだ。
その自信があるから、ライゾ王もこれほど強気に踏み切れる。
しかもまずいことに、オーミからの使者と同じ日に、ベルカナ使者も
書状を携えてアツィルナのシンフィエトリ宮に到着していた。
うっかり謁見控えの間で鉢合わせかけた彼らをすばやく引き離したのは、
女帝の秘書官としてシンフィエトリ宮での地位についた、黒髪の愛人にして
ドゥラスロール公国の間諜、アザト・コーヴァだった。


<ベルカナ王国国王ガラドラル・バレッジ・イレ・ベルカナより
我が友にしてネツァーク帝国皇帝アツィルナ・マルクト陛下に言上いたします。

陛下、両国の協約をミヅァスートの門にてご確認いただきましたこと、
まずは御礼申し上げます。
これにより両国間の戦時協約はオーミ国王という証人を得、新たな
二国間協定となりましたことを確信するものであります。
しかしながらその効力が十分には発揮されておりませんことを、私は感じずに
おれません。
ご存知のように我が国の商船は、海賊の度重なる襲撃にさらされております。
そしてこれらの海賊船が一様に<翼ある獅子>、つまり貴国の海軍旗を
掲げているという憂慮すべき事態について、すでに再三のご相談を
申し上げているにも拘わらず、未だ何の弁明および対処もいただけておりません。
加えて近頃では街道を通過する隊商も、貴国との国境を越えた付近で、
その一部が山賊らしき者どもによって姿を消す事態が頻発しており、
我が国は少なからぬ被害を被っております。
捕らえられた山賊は皆ネツァーク人であることから、この書がお手元に
届きましたなら、早急かつ適正なご対処を下さるよう切に希望し、
期待するものであります。

モルハバにて。盟約の息子、ガラドラル・バレッジ・イレ・ベルカナ>


そもそも公文書ではなく覚書で交わした共闘の密約が、一体いつのまに
協約だの協定だのになったのやら。
盟約の息子、などという署名に至ってはあの若さで耄碌したとしか思えない。
アツィルナの元に届いた4通目の書簡。
不利な密約に対してバラゴ先王の死をいいことに、先にしらを切った
己のあつかましさはさておき、彼女は半ば呆れながらも
その筆跡がミヅァスートで見たガラドラルのものではないことに気づく。
内容も、あの小娘のように震えていた男が書いたのものだとは
到底思えない図々しさだ。
ということは新王の傍らで権力を持ち、外面だけでもそれなりの強腰に整えた
手紙を、王の名の許に送れる誰かがいるということだ。
ガラドラルに近い、つまりそれは次の王位に近い者。
アツィルナは考える。
この際その誰かが使えそうな者なら懐柔し、協定の名の元に扱いにくいオーミを
ベルカナに攻めさせるか。
それとも、あの厄介な死神は、どうも王女に触れない限り祟りはしないらしい。
ならばライゾの機嫌をとり、オーミとともにベルカナを分け合う権利を
頂戴するか。
アツィルナは、先にベルカナ宛に親書を書くことにした。


<ネツァーク帝国皇帝アツィルナ・マルクトより、ベルカナ王国国王
ガラドラル・バレッジ・イレ・ベルカナ陛下に言上いたします。

新王におかれましては滞りなく戴冠式を終えられました由、お喜び申し上げます。
大変にご立派であられたと大使よりの報告を受け、我が事の様に嬉しく思います。
さて、ご要請の件に関しまして、
ミヅァスートでライゾ王にも言明いたしました通り、ネツァーク・ベルカナ間の
共闘を示すかの覚書は巧妙に偽造されたものであり、
私の手になるものではございません。
またその裏紙面への私の署名は、ライゾ王との約定への認証であり、
身に覚えなき密約に関して何らかの効力を持つものではないということを、
ここで再び明言いたします。
しかし貴国の窮状に同情をいたさぬわけではなく、オーミ王国を我が翼下に
収めしことを否定するものではございません。
今後はオーミ王国の姿勢を注意深く監視し、無軌道が行われぬよう取り締まると
同時に、オーミの海賊行為が私の指令によるものではないと証するため、
陛下のお求めあればすぐさま治安維持につとめます我が軍の派遣も、
私の視野内であることをお伝えいたします。

ビルレストにて。北海の旗手、アツィルナ・マルクト>


<ベルカナ王国国王ガラドラル・バレッジ・イレ・ベルカナより
アツィルナ・マルクト皇帝に申し述べます。

貴殿の主張のように、ベルカナ・ネツァーク間の協約書が
偽者であるとするならば、これを我が国が尊守する価値は一部もなく、
早々に破棄するをためらう理由なしと判断し、その事実をオーミ国王に
通知するもやぶさかではないと申し上げます。
同時に治安軍の派遣は協約への裏切り行為であり、我が国に対する
敵対行為として、交戦の用意もやむを得ぬものとの認識を明らかにし、
貴殿のご英断に期待するものであります。

モルハバにて。有翼の蛇、ガラドラル・バレッジ・イレ・ベルカナ>


ベルカナからの返信はなかなかに強気なものだった。
が、その書簡を届けた使者の報告にあるモルハバの様子は、半無政府状態の
混乱したものだった。
加えて放った密偵の調べによると、親書の作者はバラゴ時代からの老臣であり、
新王の傍らで下克上のひとつも起こしてみようという覇気はすでにない。
またガラドラルの身辺には、その寵愛による特権に与ろうとする輩はいても、
国を憂えてクーデターという風潮は、いずれ生まれるにしても
当分は芽生えそうもない。
そして渦中のガラドラルはといえば、エフワズへの恋文に書く詩を作るのに
忙しいという体たらくだ。
これではベルカナを落とすのは容易くとも、その後オーミを制するに不可欠な
軍事力を引き出すことは難しい。
ガラドラル政権の失墜を早めさせ、傀儡政権をアツィルナの手で打ち立てる
という方法もあるが、それには手間も金もかかりすぎる。
おまけに逃げ去るオーミ副王の船に乗組員を、ファルマチュル商会から
手配してやったのがマクール王だったと聞けば、もう何も考える必要はない。
すでに妹を取り戻し、ベルカナの内陸部ヴィンダールブに手を伸ばし始めた
ライゾ王は、アツィルナにとって素晴らしい恋人になった。
今は少し拗ねているけれど、どんなものも修復は可能だ。
かくして彼女の恋文がライゾの元へ届く。
ただし百戦錬磨の毒婦の恋には、嫌な駆け引きがつきものだが。



つづきます



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8章 予言者は語る |トラックバック(0) |コメント(0)

「ヤンエロ~愛するが故に~2」の感想です。ネタバレあり

テーマ:男性声優 - ジャンル:アニメ・コミック

ヤンエロ2

1が好きだったので2も予約してました。
ちゃんと発売日に届いたよ! ひゃっほぅ!

柊三太さんですが、この方のこういうCDを初めて聴きました。
私はネタは全然知らない、またはオチまで全部知ってる、かどっちかが
好きなので、公式視聴とかもしてません。ので
どんなトーンなのかも知らなかったのですが、

あぁあ~、い~い低音ですねぇ。

しかも凄まじく色っぽい寝息で始まるなんて…素敵すぎる。

名前はレンですが、よく歌ってるプリンスさまといい、
レンという名前の人にはなぜかさま付けしたくなるキャラが多い気がします。
といわけで、ネタはダダモレです。

彼は小説家。
彼女は出版社で働く人です。

上記の素晴らしい寝息からの、まだ起きて彼の小説を読んでる彼女に気づき、
「何回読んでも結末は変わらないぞ」

彼女が編集部に異動になったことを喜んでくれる彼。
「俺も嬉しいよ」「でも」「いつまでも寝ない奴は、襲うぞ」
「暴れるなって、おとなしくしろ」


付き合った記念日にホテルでお食事
そしてエレベーターの中では
「おまえはこっち、ここ、防犯カメラの死角だから、
ってことは何するか、わかるよな」


彼女に移ってた香水の香りに反応する彼
「ふーん、男性作家の担当になったのか…」

彼女が担当する新人作家と打ち合わせ兼食事の帰り、彼の家で。
「またムスクの香りがしたからさ」
「そいつと食べたメシで腹いっぱいか…、
じゃあ俺のケーキなんて食えないよな」


何を食べたかキスで探る彼。
「おかしいのは、俺以外の男と二人っきりで食事してくる
おまえだろ」
「ヤキモチが嬉しいならいくらでも妬いてやるよ。」
「そのかわり、おまえはちゃんと危機感を持ちなさい」


これまで一番に読んできた彼の小説を、今は別の人の担当だから先には読めないという彼女。
そして翌日彼女は食材を持って彼の家へ。
「そういえば、昨日の夜から何も食ってなかった。」
「おまえの担当と俺、どっちが心配だ」「そこは俺って答えろよ」


買い忘れたものを買いに出たい彼女をキスで引き止める彼。
しぶしぶ送り出した彼は、彼女の留守中に電話で編集長を脅し
彼女を自分の担当に変えさせる。
「では、今日から変更ということで」

その電話を聞いてしまった彼女。
「俺は編集長に相談してただけだ」「何でおまえは喜ばないんだ」
「まさかおまえ、俺よりも新人のほうを選ぶのか」


 この人、キスのリップ音がウェッティでいちいち手練感が…。職人技?
「必要なことなんだ」「わかってくれるよな」

そして彼の締め切り明け2度目の寝息です。好い声です。
「前の担当してた奴に会ってたのか」
「こんな香りがする服なんか、もう着られないだろ」
「おまえは誰のものだ」
「もしかして身体に教えないとわからないのか」
「そんなことないよな」「ほら答えろよ」


そんなタイミングで彼女の携帯に編集長からの電話が。
「終わるまで俺の指を舐めて、おとなしくしてなさい」
 
会話に交じる微妙な吐息がまた…エロいよ。
「彼女には住み込みで働いてもらいたいんですが」
「今、飼い猫に噛まれて」
「悪さをしないように、これから躾けますんで」


電話を切ったら
「最近してやれてなかったから、期待してたんだろ?」
「なぁ、舐めてほしい?」
「おねだりしてみろよ」「レンので激しく突いて下さいって」


住み込みになると食材の買い物も自分でして
彼女を外出させない彼。
「おまえ外に出たいのか」「まさかそんなことないよな」

でも帰ってくると彼女は編集長との電話中で。
「へぇ、仕事の電話ね。」「俺に隠れてコソコソ」
「他の男と電話することがおまえの仕事か」
「おまえが聞いていいのは、俺の声だけだ。」

 できることならそうさせていただきたいような美声ですが。

「折れた携帯なんか拾ってどうするんだ」
「おまえは黙って、俺を感じろ」「まだ躾は終わってないんだから」


一旦は彼の気が済んだように見えて
「大事なおまえを気づかうのは当たり前だろ」

でも彼女が彼の作品じゃない小説を読んでると
「お仕置きが必要だな。
おまえの網膜から、他のものを見ていた残像が消えるまで」

 すでに単語が尋常じゃないです。網膜って言葉を日常会話で使ったことないです。

「本当は目隠しされるの好きだったのか。
ごめんな、今まで気づいてやれなくて」

 時々出てくる冷やっとした抑揚がぞわぞわっとさせてくれます。

仕事の封筒をさがしている彼。見つけた彼女。
「こんなものおまえは触るな!」
「この封筒、届けたバイク便の奴がベタベタ触ってた」
「あの本も、机だって、原料の木から考えれば何人が触って」
「壁にもたれるな、ソファにも座るな、ベッドにも寝るな!」
「その足も床に着けるな、俺の上から退くな!」

「このままおまえを俺に乗せたまま死んでしまえば、
肉は腐って絡み合うんじゃないか」
愛してる。ひとつになろう」


ここから救済ルートと分かれます。

「そうだ、俺はおまえが大切なんだ」
「おまえから、自由や命を奪いたかったわけじゃない!」
「逃げろ」「愛してる、心から。だから、さよなら」


それでも彼を好きだと告げる彼女。

「これからは、絶対におまえを傷つけたりしない」
「俺たち、結婚しないか。」

でハッピーエンドです。

 ただこの辺テンポが早くて、ちょっと覚めてしまうというか、
 この手の強迫神経症は患うのに何年もかかって、さらに我に返って気づいたところで
 治るのにまた患うのと同じぐらい時間が要るという認識があるので
 さすがに1枚のCDでは無理な題材に向けて、自分の意識が横滑りしてしまいました。
 しかも彼女の反応も<私がいないとダメな彼>への共依存と見えなくもない。
 なんてこと考えてたら、ぁあー! 一番盛り上がったとこ半分うわの空でした…。

正規ルートは
「おまえは俺、俺はおまえになるんだ」
「おまえも喜んでくれるのか」「もうここをこんなにして」
「おまえももっと、俺がほしいだろ?」
「二人の境目がどこなのか、分からなくなるぐらい絡み合って」
「ひとつになるその日まで、ずーっと」


ってこの、ずっーと、がかなりイイです。エロ深イイ感じに聞こえて好きです。

こういう病みって感情の振れ幅がかなり極端なものだと思うんですが、
何か今回その幅の中にも、熟達のエロさと大人のカッコよさが同居する
シブめの病みを聞かせていただきました。

そしてヤンデレCDは、お値段上がってもいいからやはり2枚組みであってほしい…!
中盤のだんだんと禁止事項が増えて束縛が強くなってくるあたりの
怖さ増していくじっくりさが、終盤の爆発地点にも是非ほしい…!

ああ…、それにしてもイイ声です。

稀に何かの周波数が自分に合わなかったりするのか分かりませんが
いきなり吐きそうになる音質もあったことがあるんですが、
この方の声はホント聴いてて楽な音です。
事務椅子からフカフカの大きい椅子に座りなおしたような気がする楽さです。

はぁ、楽しかったです。
ありがとうございました!






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母なるレニエラ(黄金の太陽23回目)

テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

エフワズは左手に持った投擲用の短剣でビァーゼを狙い、
右手の長剣をバーレイグに向ける。
「その檻を開けろ。」
頑丈な南京錠がかかった猛獣用の檻の中、オースィラは今にも泣き出しそうな
顔をしていた。
「開けろ。でなければ殺す。」
咄嗟に剣を抜いたバーレイグの面差しは、子を守る父親が当たり前にみせる
激しさで、エフワズを威嚇した。
けれど死神の瞳は冷たく光ってそれを嘲笑する。
「その剣が私に届く前に、私はおまえたちを殺せる。」
おそらくその通りだろうと感じて、バーレイグは動けなかった。
それでも、オースィラを解放するわけにはいかない。
今日このとき、この戦いに誰もが命を賭けている。異国の姫にその責はないが、
始めたからにはやり通すしかないのだ。
「…だめだ」
「そうか。では奪おう。」
バーレイグの合図でビァーゼが走り出した瞬間、エフワズの手から短剣が離れ
一直線にビァーゼの頭部へ向かって空を切る。
直後、高い金属音をたてたのは、それを弾いたバーレイグの剣だった。
その隙を好機と、恐ろしい速さでエフワズはバーレイグめがけて剣を振るう。
今しもバーレイグの首が横ざまに刎ねられようという刹那、
「やめて!」
上がった少女の叫び声に、エフワズの剣はぴたりと止まる。
バーレイグの首に当たった白刃の下から、つっと一筋血が流れた。
「やめて、エフワズ」
オースィラは小刻みに震えつつ、それでもはっきりと言った。
「バーレイグ様、ここを開けてください。
オーミの王女は逃げたりしません。
このヤヴンハールと共に、務めを果たします。」
エフワズはバーレイグから目を離さないまま奥歯を噛んだ。
「殿下、それはネツァークの虜囚に戻るということです」
「それでも、やめて」
「まさかオルグに会いたいとでも?」
脅すような口調にオースィラは怯えのにじむ声で、けれど首を横に振る。
「だめ、だめです。まだ、帰れないわ」
兄は言った。<王女らしくしていろ>と。
果たせなければ王女でなくなる気がして、不安だった。
そこにエフワズの険しい視線が突き刺さるようで、堪えきれずにオースィラは
涙をこぼす。
「お願い、エフワズ、私を王女で、いさせて」
記憶もないほど昔から、エフワズは当たり前のように傍にいた。
離れてみてようやく分かった。いてくれたのだと。
それは自分が王女だから。
王女でなければ、ヤヴンハールは守ってくれない。愛してくれない。
そんな強迫観念にとらわれて、彼女は泣いた。
「私、私は、何をすればいいの?エフワズ、言って。
私、何でもできる、から、しますから、言って。」
エフワズより先にオースィラの真意を察したバーレイグが、小さな鍵を
胸元から取り出す。
それを奪うように鍵を開けたエフワズに、オースィラはしがみついて髪をゆすった。
「だって、あなたは、ヤヴンハールだもの。
王女を守るのが、ヤヴンハールだもの。
私、あなたがいないと、生きられない。耐えられない。
だから、お願いだから、私を王女でいさせて」
懇願する彼女が何を案じているのかを知り、エフワズは視界も眩むほど強く
惹きつけられ、彼女を抱きしめる。
剣を落としたその時、地鳴りと地震のような揺れを感じた。
すぐに階下で騒ぎが起きる。
水が地下から噴出し、館内の井戸や床下の一部が吹き上げたようだ。
「引渡しの席は天幕に用意させろ。
場所は南南西の平原にある境界線上だ。」
エフワズの指定を背中に聞き、バーレイグとビァーゼは部屋を飛び出して行った。

内門は中から開かれた。
跳ね橋は篭城の際に壊してあり、ネツァーク側の騎兵隊は
再び水が満ちた堀によって歩兵隊と分断された。
内城壁の上から降る弓矢の掃射をくぐり抜け、砂時計のくびれを通過するように
門を通って散開するしかないネツァーク軍の歩兵を
門を囲む決死隊が迎え討つ。
わずか24騎。
けれど長い内戦を生き延びた精鋭たちだ。
ベルダンディはヘルテイトの見えない右目と動かない右手の代わりをすべく、
彼女の右側にぴったりと馬を寄せる。
戦場で馬の立ち位置を守る不可能を可能にするほど、二人は息が合った。
ヘルテイトの左腕が上方から後方に大きく弧を描いて下から前へ振り出される。
その切っ先は先頭の兵士の喉笛を縦に切り裂き、顎を断ち割ってのけぞらせ、
勢いあまってもう一周を回るついでに二人目の下腹からめり込んで鳩尾へ抜けた。
その内臓がどろりとこぼれた時には、彼女の剣は次の兵士の延髄を、
さらに次の兵士の眉間と同時に貫いていた。
ベルダンディはその凄まじさに圧倒される。
以前彼女が<純粋な人殺しの技術>と語った意味がよく分かる。
剣を受ける手、押し返す手、突き入れる手。
盛り上がった左肩から生える腕は、縦横無尽に伸び縮みする生き物のようにも
見えた。
攻撃をかわす手際と急所を狙う天才的な正確さと、動きの速さ。
それにも増して女にあるまじき腕力だ。
しかも見回すと決死隊の中には彼女と同じ鍛冶屋に学んだらしき
兄弟弟子もいるようだ。
左側を完全に彼女に預けられる有利に、ベルダンディもそつなく相手を
打ち倒していける。
右利きのベルダンディにとってはかなり有利に。
3人斬ったところで一瞬振り向くと、彼女の大腿に刺さった矢が見えた。
「ローニ!」
「なんだ!」
ヘルテイトは振り向かず、鮮やかに剣を操りながら怒鳴り返す。
そして初めて刺さった矢に気づいたように、鏃を残したまま
箆だけを小枝をはらうように刀身で折る。
痛みどころか何も感じていないらしい。
「ケーナか!」
「ああ!」
マクール製の麻薬。見たところ彼女だけではない。決死隊の全員が
少なからず含んでいるのだろう。
肉のひとかけらになるまで、その身体を使い尽くせるように。
圧倒的な数の違いを前にしても、決死隊の包囲の中で行われているのは
戦闘というより一方的な殺戮に見えた。
そして死兵の囲みを抜けた者にとどめを刺すのは、独立軍の最後の志願兵たちだ。
中には女子供も混じっているが、一旦戦闘が始まれば誰しも死に物狂いで
戦うしかない。
それでも志願兵たちが相手取る人数は、驚異的に少なかった。
とはいえ、そんな戦況は続かない。
続くはずもない。
城壁の外では城壁内に入った前衛隊を救うべく、ゴルガ将軍が一点に集めた
将兵たちを懸命に指揮していた。
ほどなくベルダンディはわが目を疑う光景に出くわす。
ネツァーク騎兵隊が、水が満ちた二重の堀を、その水面を渡ってくるのが
見えたのだ。ゆっくり、しかし確実に。
「ローニ!」
思わずもう一度ヘルテイトに呼びかけた。
「ああ!やつら死体を橋材にしてる!」
鉄砲水が運んだ土砂で、門前の堀の中に浅瀬ができたのだ。
そこに、火に焼かれ水に沈んだ兵士たちの遺体を重ね、鎖帷子どうしを
引っ掛けて繋ぎ、橋は作られた。
夥しい友軍の屍を文字通り踏み台にして、騎兵隊は縦列で前進する。
先行する歩兵が作るそばから伸びていく、道を通って。
「決死隊!態勢を立て直すぞ!」
斬りかかる兵士の首を水平に剣で撫で斬りつつ後方へ押しやって、
ヘルテイトは声を上げた。
応じて、これまで門前を丸く囲んだ位置を崩さなかった決死隊が、
徐々にその輪を広げていく。
志願兵たちに背中を預け、互いの間隔を広くとる。
門を通過するネツァーク歩兵が不意に途切れた瞬間、ヘルテイトは
初めて馬をベルダンディから少し離した。
いまだ一騎も欠けない24騎に向かうネツァーク騎兵隊が徐々に速度を
上げはじめる。
その先頭はゴルガ将軍だ。
「ダーテ!」
「ああ!」
打ち合わせも、ひと言のやりとりもなく、それでも二人の意思は通じる。
ベルダンディは左右の立ち位置を入れ替え、さらにくるりと馬を反転させて
馬首を内側に向けた。
包囲の中央で二人は馬首の前後を互い違いにして並ぶ。
剣を構えなおすエルストラの、見開いた隻眼が直進してくる黒馬を捉え、
二人は息を止める。
顔を斜めに縦断する傷のある男。ゴルガが門を通過する、その一瞬、
二人は同時に剣を振るった。
左前方と右後方からの斬撃。
それを瞬時に見極めたゴルガは、馬上に伏せてヘルテイトの剣をかわしつつ、
右後ろ手にベルダンディの剣を跳ね返す。
が、次の瞬間、ゴルガの馬は大きく前にのめり、頭から回転してどっと地に転んだ。
足元から突き出た志願兵の槍が、黒馬の左前足を捉えたのだ。
けれど地面に投げ出されたゴルガが、乗り手を失った馬を見つけて
その轡を掴みにゆくのを追いかける暇はない。
300の騎兵と残った歩兵を、何が何でも止めなければならない。
恐ろしい勢いで決死隊は敵をなぎ倒してゆく。
鬼神の形相で馬を駆り、槍が刺さろうと剣に斬られようと、痛みなど知らぬげに
退くこともふらつくこともない彼らは、ネツァーク兵の目には不死身の魔物にも
見えた。
勝ち戦を確信して戦闘への覚悟を欠いていたネツァーク兵は、
もとより死ぬ気の猛攻を前に、命を惜しまずにはいられない。
一人が戦闘を放棄すると、後に続く者は必ず出る。名のある騎兵ならまだしも、
数でしか扱われない歩兵は、責任感も自尊心もそれに見合うものしか
持ち合わせていないものだ。
300の騎兵と7000の歩兵。対するたった25騎の決死隊と3000に満たない独立軍。
やがて押され始めたのはネツァーク軍だった。
それでも城壁の中に入ってしまえば、互いに逃げ場はどこにもなく
ひたすら数を減らしあうしかない。
やがて統率は失われ、騎兵と歩兵が入り乱れての激戦は
日暮れ近くまで続いたのだった。
いつ果てるとも知れず、足元に倒れた人や馬の死体につまずきながら、
口も利けない疲弊をこらえ無我夢中で剣を振るうネツァーク軍。
これを最後と全滅覚悟で命を削る独立軍。
双方退くに引けない一戦が決したのは、名もない志願兵の手で
ゴルガ将軍の首級があげられた夕暮れだった。
百年繰り返した反乱と、十年に及んだドゥラスロール独立戦争は、
ついに決した。
ギースルの勝利をもって。

勝者にも敗者にも生存者の少ない戦。
累々たる屍の間に、生者はしばし立ち尽くす。死にきれずにのたうつ兵士の
呻きと、夕日に鳴く鳥の声を聴きながら。
館に残った人々の手で息のあるものが救い出され、敵味方の区別なく
城館に収容された。
やがて辺りに惨状を覆い隠すような夜の静寂が舞い降りると、瞬く星の散り敷く光が
犠牲者たちに降り注ぐ。
館から出てきた女が一人、竪琴をもって鎮魂歌を爪弾いた夜、
風は蕭々と立ちそよぎ、月は皓々と輝く。
虫の音ひとつ鳴りもせず、竪琴だけが幽けく響き、弔いの祈りにも似た
月明かりの下で、生き延びた誰もが涙にくれた一夜だった。

明けて翌朝、容赦なく白日に晒される悲劇の舞台で、人々は遺体と兵糧を
運び始める。
独立軍の死者2600、負傷者300。
ネツァーク軍の死者は約16000、捕虜200。生きて昨晩の間に逃げたらしき
ネツァーク兵を、誰も追うことはなかった。
バーレイグとビァーゼは決死隊の遺体を捜したが、発見された身体はどれも
刀創に覆われ、顔の判別も困難で、限界を超えた彼らの戦いぶりを如実に
表していた。
切断されて体の一部が欠けているものも多く、ヘルテイトとベルダンディと
みられた2遺体も、ついにその頭部は確認できなかった。
壮絶な戦いの後、女帝アツィルナ・マルクトが送って寄越した代理人は、
ヴァルキールから送られベルダンディが遺したマクール王の通行手形を
バーレイグに示され、泡を食ってアツィルナに手紙を書いた。
マクール王がドゥラスロールに付いたと。
当然その背後にオーミの存在がないはずもなく、これ以上敵を増やせない
アツィルナ・マルクトはようやくドゥラスロール公国の独立を認めた。
代理人は独立宣言書に署名する。あまたのネツァーク兵とドゥラスロール人の血を吸った、
鬼哭啾々の戦跡で。
負傷した200人の捕虜と引き換えに、ガウト牢獄とラーズグリーズ収容所にいた
独立運動家たちも解放された。
ドゥラスロール公国内に居住するネツァーク貴族と駐屯軍には退去命令が下り、
恒久相互不可侵条約も、オースィラの身柄と引き換えに締結されることとなり、
日時の調整が待たれる。

全てが終わった後、ビァーゼはベルダンディを含めた決死隊25騎の
英霊が納められた石棺を二色旗で包み、戦死者の名を刻んだ石碑と共に、
館の円塔広間に安置した。永遠の感謝と畏敬を捧げるために。
緑なす豊饒の大地と豊かにたゆたうレニエラ河。
円塔の上に掲げられた二色旗は、決戦の地が風にそよぐ青草に覆われた後も、
二度と降ろされることはない。



つづきます



7章 母なるレニエラ |トラックバック(0) |コメント(0)

プロフィール

シカピ

Author:シカピ
数年前、とある美声にひと耳惚れし、
そのまま声フェチに、そして
ヤンデレに行き着きました。
同じ道を通った人、いますか?

真冬以外は年中花粉症です。

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