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4色の支配者-赤の王-の感想です。ネタバレあり

テーマ:男性声優 - ジャンル:アニメ・コミック

4色の支配者2赤の王

実はこの方の作品を、ほっとんど聴いたことがありませんで、
殺生丸ぐらい?のイメージしかありませんでした。すみません。

今回もジャケ絵のタッチがキレイです。
野生的で燃え立つような髪の房づけから、繊細な瞼や唇の影。
濃淡が際立つ輪郭と藍色の空を染める炎ににじんだ月光。

50分弱のお話の主人公は滅んだ無色の国の娘。
今作の彼女は虎視眈々って感じですかね。






オープニング、赤の王のもとに食事を運んだ彼女。
新人が一人で運んできたことに疑いを隠さない王様は、まず軽く脅してみる。
「この部屋で何人の女が死んだか」

人を呼んで彼女が身元調査済みだと分かると人払い。
「服を脱げ」「身の潔白を証明したいなら」
  うん、ま、予想の範囲内ですよね。

従った彼女の殺意を見抜き、もうひと脅ししてみる王様。
「裸にされ」「髪を鷲掴みにされ」
「千切れそうなほど、胸を揉まれればどうだ」
「もっと脚を開け」「自分の指で割り開き」
「隅々まで見えるように」

  なんだか漂うオヤジのセクハラ感・・・。

逆らわない彼女に興味を失った様子の王様。
片腕がないという王様は、裸のまま食事の毒見と介助を彼女に命じる。
その失くした片腕について聞いた彼女。
その度胸に免じて話し始める王様。

父王亡き後、領土をめぐって起こった兄弟間の争い。
片腕を失くしつつも兄弟全員を討ち取り王座に着いた彼。
「して、貴様は俺にどんな恨みがある?」「なにゆえ」

彼女が無色の民だと分かると笑い出し、4色の国が成立した際、
結託して滅ぼしたと話す王様。
「生き残りがいるとは」
それでも<暇つぶし>に彼女を放置することにした王様。

宴席に彼女を呼び、膝に座らせて衆目に披露するという王様。
「この女を抱きたくなったものは」
「聞いてやらなくもない」
「服をすべて脱ぎ捨て、皆に見せろ」

素性をばらされ殺されたくなければと脅され、従おうとした彼女を
今度は止める王様。
「もういい」「退がれ」
  彼女に惹かれる王様の、じわっとした焦りがよく出てます。

その後は彼女が運んだ食事を受け付けなくなる王様。
彼女が部屋に入ってみると、一人で怪我に苦しんでるらしき王様。
「絶好の機会だ」「どうやって俺を殺す?」
「唇に毒を塗りたくり」「俺の息の根を止めてみろ」

とか何とか言いつつ彼女にキスする王様。
  アンタ怪我は?
  
そして怪我がちゃっちゃと治った王様。
「今夜、俺の部屋へ来い」
言われるままに部屋へ行く彼女。
「泣き叫ばせてやる」
「俺が夢中になっているところを、などと考えていまいな?」

  いやむしろスッパリ殺るなら一番油断してるのは事後でしょう。

「もっと、指を入れてやる」
「痛がるなら泣けばいい」「しがみつくな」
「もういい」「やる気がうせた」

  って、ええ!?そこでストップ!?
  前作に続き王様の王様が別の意味で強いな!?
けれど彼女を隣で寝かせる王様。
「どうせこの先、安心して深く眠れる夜などやってくる
ことはない。 ならば美しい娘を抱いて眠るほうが、
よほどいい。」

  ここ、何だか分かりませんが不意に泣きそうになります。
  その感情の揺れが、ほんとに降って涌いたように、しかもダイレクトに伝わるので
  聴いててちょっとびっくりしました。役者ですねぇ。

「俺には敵しかおらん」
  ああ、まあその性格ではねぇ
そのまま彼女に殺されるのも悪くないという王様。
  夜闇に紛れた幻ではなく、これも確かに彼の本音だとしか思えない声です。

けれど夜が明ければいつもの王様に戻る彼。
「貴様は殺す。」
「貴様ごときに命を奪われるのは、許されん」

  焦りのある堅い口調が王様の本心を写すようです。
そんな王様に愛を告白する彼女。
「愛しているなら」「殺されることを望め」
それを受け入れ、死ぬ前に抱いてくれと頼んだ彼女。
「来い」「気が狂うほど、抱いてやる」
  早!即答早!

「死を恐れない姿が」「俺には恐ろしい」
「苦しければ、俺にしがみついていろ」
「力を抜け」
「おまえの中で動いていると、全てを吸い取られてしまい
そうだ」 「呪いが?何だ、黙って舌を出せ」

  王様の声が、声があ!
  その喘ぎ、与えることと受け取ることが同居してるのは良くわかります。
  が、それゆえ攻めなのか受けなのか分からない空気が!
  いや、わざわざどっちかに分類することもないんですが。

そして呪いの真偽を身をもって知った王様。
死の間際に彼女への愛を自覚した末期の息は、どこか安堵の溜息にも似て…。


前作同様、彼女の周囲の環境やこれまでの経緯については
触れられていませんので、彼女が王様を愛するようになった理由は
よくわかりません。
生物学的に自分の身の安全を第一とする女ってイキモノが、自分を危険に晒す
相手を慕う確率はほぼないのが普通だと思うので、そこのところが微妙ですね。
妄想力をフル稼働する必要があります。

そしてすみません!自分の思い込みによる声の違和感が拭えませんでした。
何と言うか、作り込みナチュラルメイクが横滑りした結果、持って回った老け顔に
なってしまった時のような違和感です。って、誰にも伝わらないですよね。
ちょっとしばらく封印の後、頭をリセットして聴きなおしたいです。
最後のほうには色んな状況が見えてくる構成だといいなぁ。

さ、次は「LIP ON MY PRINCE 2」。か、「弘暁の覚悟。」に行きます。
ありがとうございました。




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「月蝕のエゴイスト-愛しすぎて壊したい- ~緋色の空~」の感想です。ネタバレあり

テーマ:男性声優 - ジャンル:アニメ・コミック

月蝕のエゴイスト-緋色の空-

あああああやっぱり28~30日発売が多すぎる!
指もお金も足りなくなります!!

でも前作が大好きだったコレを真っ先に聴きました!

先に言ってしまいます。すみません!!白濁の空のほうが好きです!
あの根暗いところと、歪みさ加減、人としてどうだろうなところが!
結構な自分勝手さだった玄音さまとちがって、逸聖イッセイさんはすごく真面目で
真っ当ないい人なんです。
なのに本当にすまない!!原因よりも大きく歪んだ玄音様のほうが
気になって、惹かれてしまうんです!!


今作は大正時代のカフェのお話

語りを始める壽太ジュッタさん(藤原祐規さん)は前作と同じく主人公の、
幼くして亡くなった双子の兄だそうです。
重さや悲愴感が微塵もない語りが、生後間もなく亡くなった設定を
よりリアルにしてると思います。
生まれたてなら、そもそもこの世に思うところがなくて普通でしょうから。

華族の子で政治家一家のブラックシープな逸聖さん(下野紘さん)は
カフェのオーナーでシェフですが、メインは洋菓子作りのようです。
「この香りどう思う?」
と自信作のフレーバーティーを従業員のアキトくんに聞かせながらも材料は、
「秘密」 で
「逸聖さんは焦らすのが好き」 なんだそうです。
  そうですか。毎日のように恋文が届く美貌の逸聖さんは
  焦らすのがお好きですか。

そこのお客として1人で入店した学生の彼女。
おすすめフレーバーティーのオーダーを運んだ逸聖さん。
それがクチナシの香りだと当てた彼女に揺らめく逸聖さん。
  クチナシって(カラーにも)たまーにシャウエッセンサイズの芋虫がいて
  ヒイィッ!!ってなります。

そこで体調が悪い彼女が倒れてしまうのは、前作と同じパターンです。
試験中で睡眠食事がとれていなかったという彼女。
「何か甘いものを口に入れたほうが」
  いや、むしろゴハン食べてないときはガッツリ塩系お願いします。
店名サモワールの由来を話しながらロシアンティーを入れてくれる逸聖さん。
「車が来ましたよ」
  って、あら、帰すの?いいの?帰すのね?[壁]_・。)チラッ←キモチワルイ…。

誘われたままに再び店を訪れ新メニューのカスタードプティングをいただく彼女。
そこに、もんっのすごっっく文字通りの、この単語も日常会話ではじめて
使います<チンピラ>が・・・
「あらまー、やらかい腕やなぁー」
  きたよきたよ関東系創作関西弁が。わりと嫌いじゃないですよ。
  極道の妻たちっぽいアレ。
彼女を庇ってチンピラ追い出す逸聖さん。
  なんてステキな低音ですか・・・。
そして手に怪我をした逸聖さん。病院の帰りに夕日がきれいな土手で彼女と一休み。
「小さい頃から」「家が窮屈でたまらなかった」

と、いつも優秀なお兄さん(現在政治家)と比較された子供時代を語る逸聖さん。
  それ、お兄さんはお兄さんでそれなりに色々あったと思いますよ~。
彼の料理が好きだという彼女に、自身の存在価値を求めてしまう逸聖さん。
  はいそこ病みの出発点~。

緋色の夕焼けとともに逸聖さんの心に差し、広がって満ちる緋い愛情。
 そんな感情の流れがとてもよく出てて、染み入るような語り口です。
「キス、してもいい?」「まだ、唇にはしないから」
  さすが焦らすのがお好きな逸聖さんですね~。
  
手の怪我が治るまで、学校が休みの間、逸聖さんの店を手伝うと申し出る彼女。
「恋するおまえの世界はきっと薔薇色なんだろう」
と妹を応援する故・兄。
  だああああ~~、いいですよね~~~、薔薇色の世界。あ~あ。あ~あ!

閉店後の店で生クリームの泡立て方を習う彼女。
  混ぜてる音はするんですが・・・ちっがーーう!!
  生クリームをなめるんじゃない!!その程度の混ぜで角が立つとでも思うてか!!
  ハンドミキサーがないときのあの苦労を、いや、やめときます。
  目的はそっちじゃないしね。
そしてお互いに指ですくったクリームを味見しあう薔薇色のお二人。
「もうちょとだけ、味見させて。」
「君のことが好きだ」

  そのストレートな告白は生クリームのように甘く白く・・・。

ある日、彼女のために作ったスフレで、彼女の苦手が胡桃だと知る逸聖さん。
でもおいしいから食べるという彼女。
「こんなもの、食べなくたっていい!」
「君が喜ぶ顔が見たかっただけなんだ」

  頭ではお互い悪くないと分かってても、落胆してしまう自分の始末が
  つかないってこともありますよね。
  
後日、そのお詫びにと彼の先輩が運営するレストランに連れてってくれる逸聖さん。
「デザートのチーズケーキ、胡桃入ってたけど、
気づかなかった?」
「僕のケーキとどっちがおいしい?」

  自分で連れて行ってそりゃないよ逸聖さん?

自分の店に戻ってお茶をいれ、お土産にもらったベリーのムースを
彼女に食べさせる彼。
「先輩の作ったカスタードクリーム。それにジャム。」
「どっちがおいしいかちゃんと教えてくれなくちゃ。」

  病み声きたーーー!!
「この喉を他のやつが作った料理が通ったかと思うと、
僕は許せないな」

  細かいなそこ!!繊細さがイイ感じに裏目に出てますね~。
「もう、僕が作るもの以外、食べちゃだめだよ」
  この台詞、なんかヤンエロあたりで聴いたような・・あのゴツくてカワイイ声で。
  もう本気の<指きりげんまん>はヤンデレのお約束なんですか?
  
月齢とともに力を失っていく故・兄。
上海で小学校の教師になるという彼女の夢を知り、激昂する逸聖さん。
「僕の側にいるのが君の将来でしょ」
煮ていたベリージャムをひっくり返し、
「何で逃げるんだよ」「残さず、全部舐めて」
  って鍋1杯分ですか!?ムリムリムリムリ!!

そこから出火し一気に燃え上がる炎。倒れた柱の下敷きになって動けない二人。
  火の回り速っっ!!音速ですがな!!
そのまま彼女と死ぬのもいいかと考えてしまう逸聖さん。
「このまま天国に行けば」「君と二人だけに」
  いやまず地獄でナガサコさんっぽい閻魔さま&鬼灯さまに面会を・・・。

「君は」「僕を暗闇から救い出してくれた」
そんな彼女を死なせるわけにはいかないと、まさに火事場の馬鹿力。
  ここの声すごいです。多分紙しか手に持ってない状態で
  よくここまで声に力が乗るものですね。
最後まで助けを求めて響く絶叫。
  <誰か助けて>って叫ぶことは人生の中でそうないでしょうから
  まさに自分の中から引っ張り出すしかないんですよねこの声。すごいわ。
  
そして最終トラック、彼女が教師として赴任した場所で、入ったその店は。
「いらっしゃいませ。ずっと、お待ちしていました。」
  先回りして開店!?
  ある意味では凄まじいまでのストーカー根性ですよ!?
  そんな穏やかなすっきりした声で、何だかハッピーエンド風に待ち伏せとは、
  大技ですね。


最後に残ったのは火事の中の絶叫と、すっごい美麗なジャケ絵です。
今回のはいつもの下野さんのゴツさとカワイさの合わせ技に、しなやかなツヤで
情感を加える感じがステキでした!
故・兄の藤原さんは軽やかなトーンでカドがなくて聴きやすかったです。

さ、次は4色の支配者第2章を聴きます!
主にツッコミばっかりの感想になってしまいましたが。(←いつもそう。)
ありがとうございました!!



拍手くださった方、ありがとうございます!
いつもながら聞く側をブンブン振り回してくれるイイ声ですよね~!


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霧の双塔(黄金の太陽34回目)

テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

大回廊を引き返せば、ソウェルのいる読書室は書庫のすぐ隣にある。
扉を勢い蹴り開けると、ソウェルのヤヴンハール・トルドが2人の男と
交戦中だった。その足元、床に倒れた男はすでにトルドが斬ったらしい。
ソウェルも必死に剣を構えている。
ライゾは間髪いれず突進し、振り向いた男のわき腹へ、左片手で突き入れた。
同時に右手でトルドと向かい合う男に横合いから斬りつける。
身をよじってライゾの剣をかわそうとした男の肘関節が切断されて
空中に弧を描く。
その刹那、トルドの剣が男の胸を貫いた。その剣が引き抜かれると、男は
どっと床に沈む。ライゾが扉を蹴り開けてから、わずか数瞬のことだった。
床に広がる血溜まりの上、ライゾはソウェルの両肩を掴む。
「無事か、怪我は」
「兄上、血が」
言われてライゾは初めて自分の体を見下ろした。
いつの間に、こんなにも血を浴びたのか。髪も服も、隙間がないほど赤い。
「俺の、血じゃない」
大回廊をほんの数ゼッド。進む間に幾人かの敵を切り伏せた。
ほとんど無意識になぎ倒した<騎士>たち。
神殿の衛兵と同じ服を着た彼らが、オーミ人ではなかったことを、ライゾの
網膜に焼きついた残像が伝える。
「陛下」
トルドの呼びかけにも答えずライゾは読書机から枝付燭台を掴みとり、
部屋の奥の壁にフラールへの隠し扉を開いた。
「来い」
ソウェルとトルドがライゾに続いて素早く小さな扉をくぐる。
狭い通路を下りながら、ライゾは響かない程度の声で話した。
「2人で今すぐオーミを出ろ」
本来予定していた出発日は、次の春祭の日だった。
国中が浮かれ騒ぐ祭りの日なら、紛れて出国するのも難しくはなかっただろう。
それを3週間後に控えた今日、彼らは充分な用意もないまま身一つで
去らなければならない。
王の子が逃げるように去らなければならない悔しさに、ソウェルは手に持っていた
剣の柄を拳の代わりに思い切り壁に叩きつけた。
けれどライゾは淡々と話し続ける。
「神殿の地下水路を小舟で3センク(6時間)行けば隔壁に当たる。その脇の梯子を
昇った上がスヴァンニ河最下流の森の中だ。河口から歩いてトレノエイル岬へ。
崖下に小舟を一艘、隠してある。」
航海にはまだ早いこの季節、小舟ではダラテナ海を出ることも難しい。
無理に外洋へ出れば、海の藻屑は必至だ。
方法があるとすれば、海流に乗って陸が見える程度の沿岸部沖合いを
南大門まで移動し、そこで航海に耐えられる船と人員を入手しなければならない。
けれど資金を取りに戻ることもできず、外国人が入り込んでいるこの様子では
港は<世界王の騎士>におさえられているかもしれない。
つまりトルドは、小舟をどうにか南大門へつけ、ソウェルを守りながら
敵の目を盗んで、丈夫で足の速い小型の帆船を奪うしかない。
無謀極まりない手段だが、他に選択肢はなく、やらなければ命が危うい。
「分かりました」
先に響いたのはソウェルの声だった。
9割以上勝ち目のないその賭けに臨む決意を、真っ先に固めたソウェル。
いつもいつも、ライゾの意識を鷲掴むような煌めきを見せつけてくれた弟。
その存在が、どんなに心強かったことか。
王国の未来を託すに相応しい心を持つ弟。その無事の成長を祈って、
ライゾは彼の旅立ちのために、このひと月、本当にたくさんの手紙を書いた。
厳重に秘されていたその宛先は、ネツァークでもドゥラスロールでもない。
「向かう先はユシヤだ。」
「ユシヤ?」
トルドが鸚鵡返しに問う。
ユシヤは東の海域の端に位置するオーミの同盟国だ。
年に2回だけ交易に来るユシヤの船は大きく強く美しく、商人たちは自国を称して
雅な文化の花開く平和な国だと伝えていた。
けれどそこはあまりに遠く、トルドとソウェルだけで動かせる程度の船で
たどり着けるとは到底、思えない。
「ユシヤへ?」
トルドはフラールを更に地下へと伸びる梯子を下りながら二度聞き返した。
「ユシヤだ。
ダラテナ諸島の南端エンナ島に、ネツァーク軍が乗り捨てていった船がある。
それが使えるだろうが、まずはハガラズへ行ってくれ」
比較的、波の静かな内海の近い島なら、小舟でもなんとか行き着ける。
梯子を縦穴の底まで下ると、今度は子供でも腰を曲げなければ通れない、
低い天井の横穴が続く。しかも枝付燭台の明かりだけでは、かなり暗い。
ライゾは少し速度を落として進んだ。
「ハガラズに、獣人と呼ばれて久しいナーカル伝道団という一族がいる。
彼らを探して、ケセド・アマルーという男を呼び出せ。
黄色い目と灰色の髪、痩せた小柄な男だ。そいつに東へ行きたいと言えば
どうにかなるはずだ。」
そう、あの灰色狼はソレイの予言を成就させたいのだ。そのために
ライゾは予定通り死ななければならない。そして予言が語る<オーミの鍵を開く
東の乙女>とやらが必要なのだ。
それならソウェルたちが東へ向かうというのに、協力しないはずはない。
「ハガラズ島のほぼ中央に小さな洞窟がある。そこが獣人とあいつを探す
手がかりだ。」
ほどなく周囲が急に開けると、そこが地下水路だ。
二本の櫂を添えた木の葉のような小舟が、そこに浮かんでいる。
そこにソウェルとトルドを乗せ、ライゾはもやいを解いた。トルドが足元から
拾い上げた松明に、ライゾは蝋燭の火を移す。
そして小さな水門を開けると、薄い氷を割って水が流れ、舟がゆるやかに
滑り出した。
ライゾは急いで首にかけたメダルを外し、ソウェルに手渡す。
<黄金の太陽>。命を伝達する個人紋章のメダルを。
みるみる離れてゆく小舟の上で、ソウェルはライゾを見上げた。
これが今生の別れだろうと子供心に悟ったか、その瞳に浮かぶ逞しくも
穢れない光が、透明な雫に揺れる。
「お元気で、兄上…」
心をこめた別れの言葉の返礼に、ライゾは父が書き遺した文言を、
今は自分の言葉に代えて弟に手向けた。
「<万難を排して生き残り、祖国を沈まぬ陽で照らせ>
ソウェル(太陽)の名を持つ、俺の弟。」


二人を見送り、ライゾは再び駆け出す。
地上へ戻り、太陽殿から月神殿へ向かってオースィラを探すには、幾人かの
敵を倒さなければならなかった。
手足が軋み、激しく息が乱れる。そうしてようやくたどり着いた彼女の居室で
死神はライゾを待っていた。
白金の短い髪と切れ長の目。青鈍の瞳と左の眦の小さな黒子。
痩せて筋張った長い腕を長椅子の背に沿って左右に広げ、悠然と佇む男。
かつての主席執政大臣ペルス。
ダラテナ海戦が決した日、神殿を去ったフェフの実父。
自殺したフォルセトの夫。そしてイェーラの養父だった男。
上陸した13歳の春、初めて彼を見てライゾは思ったのだ。
燻る燠火のような眼だと。
今その瞳は、青白い人魂にも似た光を映し、異様な熱狂に満ちている。
ライゾは不意に我を忘れ、叫びを上げて突進した。
ペルスの周囲を固めていた8人ほどの<騎士>たちが一斉にライゾを取り囲む。
その輪の中心で舞うライゾの双剣が血煙の尾を引き、瞬く間に3人が
崩れ落ちる。
が、4人目の喉元を剣が掠めた瞬間、
「兄上!」
響いた声にライゾの動きがぴたりと止まった。
その隙を見逃さず5人の男たちが飛び掛り、ライゾの身体をがっちりと
取り押さえる。
「オースィラ!」
引き立たせられたライゾが見たのは、二人の男に両腕を捕らえられた妹。
ライゾはぎりっと歯を食い締め、二人がかりで上体を羽交い絞めにされつつも、
片脚を振り上げて右前の男の鼻柱を蹴り下ろした。
するとその足を捕らえに屈んだ男の頭を足場代わりに踏み切って、捕らわれた
両腕を軸に逆上がりの要領で身を翻すと、回転の勢いのまま左右の二人を
背中から蹴り倒す。
着地と同時にさっき頭を踏んだ男の気管を狙い、喉仏に拳を打ち込む。
曲がった鼻柱から血をこぼした男が立ち上がったときには、ライゾは剣を拾い上げ、
座ったままのペルスの短髪を鷲掴んでその喉元に剣を突きつけていた。
「くそったれ騎士が!妹から手を離せ!」
けれど二人の男もペルスも微動だにしない。
「殺すぞ」
切っ先が上向かせたペルスの喉にめり込み、血が一滴、胸元まで伝った。
「結構。できるものならおやりなさい。」
答えるペルスの冷たい声に、オースィラの悲鳴が重なる。
その細い首に左右から押し付けられる白刃。
怯えて震える彼女の青い顔。
人の感情など忘れたかのようなペルスの面差しと、口角を上げた薄い唇。
断固とした眼差しは、それが脅しでないことを無言で語る。
ライゾの手から剣が滑り、血糊を散らせて床に落ちた。
男たちがすかさずその身を再び拘束する。
「ソウェル殿下はどこです」
首に流れる血の雫を指先で拭ってうるさげに振り払いながら、ペルスは立ち上がった。
男たちがライゾの膝を折り曲げ、ペルスの前にひざまずかせる。
「答えなさい。案ずることはありません。
ソウェル殿下は我らが正しき至高の玉座へお連れします。」
ライゾは荒い呼吸に肩を上下させながらペルスを睨み上げた。
「玉座が聞いて呆れる!何が世界王だくそったれ似非騎士ども!」
ペルスは大げさに溜息をつく。
「なんという醜態か。このオーミの王ともあろう者が。なんと嘆かわしい。」
堅く押えられたまま、ライゾはさらに身を乗り出す。
「形振りなんぞ構ってられるか!ソウェルをどうする気だ!」
「我らの王になっていただくのですよ。今より、そしてここから始まる
理想の国の。
国土地も身分も越え、聖なる目的のために我らは集っている。世界王の騎士が、
この世をひとつの王国にするのです。欲に駆られた戦いや、醜い裏切り合いのない
理想郷に。世界はひとつの国であるべきなのだ。
そしてそれを統べる力を持つのは、オーミを置いて他にない。」
「バラゴの後を継いだのはおまえか」
「いかにも。しかしミュゼファン王家は穢れてしまいました。
近親交の忌むべき兄弟、そして道を誤ったあなたに、もはや王たる資格はない。
正当な血筋を持ち、心の毒されていない者。
ソウェル殿下を国王に擁立し、私が王家を浄化して差し上げよう。
殿下を世界の王に。そのために我らはあえて死神の汚名を着、
聖召夜宴を開くのだ。
さあ、答えなさい。ソウェル殿下はどこにおられるのだ」
「そうして形ばかりの王を立て、おまえが権力の座に座るのか。
一体いつからそんなくだらない野望にとらわれたんだ。
おまえは、俺だけじゃない、父上も、このオーミも、民も天も裏切るのか!」
「あなたには分からない。分かってもらおうとも思わない。
真実は誰にもあるものだ。さあ言え、殿下はどこだ!」
「誇大妄想の狂人ども!死んでも絶対答えない!」
刹那、重い衝撃と激痛が後頭部に走る。
「兄上!」
剣の柄で殴られ前へのめる頭に痺れを伴った痛みが刻まれ、霞む意識の最後に
ペルスの声が聞こえた。
「双神殿へ。」




つづきます。


10章 霧の双塔 |トラックバック(0) |コメント(0)

プロフィール

シカピ

Author:シカピ
数年前、とある美声にひと耳惚れし、
そのまま声フェチに、そして
ヤンデレに行き着きました。
同じ道を通った人、いますか?

真冬以外は年中花粉症です。

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