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夢の奥津城(黄金の太陽40回目)

テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

そして迎えた運命の朝は、13歳のライゾが神殿に帰還した日と同じ、
空澄み渡る麗らかな春だった。
この2日、ライゾはアトリ山中の閉鎖された隠し通路である洞窟を
転々と移動しながら追っ手をかわし続けた。
追っ手は常に3人組みだったので、勝つことより出くわさないことが
最も重要だった。
しかし海での生き残りには長けていても、勝手の違う山や森では
追っ手を避けながらの日中の食糧探しは不可能だったので、
夜中のうちに森の番小屋やヤルル肝いりの薬草園から盗めるものを
盗んでしのいだ。

そしてその未明。
空が薄紫に明けて行く中、ライゾは双神殿への一本道から続く神殿前の
処刑場で、すぐ側の樹に登って時を待った。
やがて8騎の馬影が土を蹴立ててやってくるまで。
祈るような気持ちで見つめていた一本道。
蹄鉄の響きが地面から立ちのぼるのを、泣きたい気持ちで彼は聞いた。
勇壮な姿で馬を駆る、先頭はもちろんエルストラだ。
後に続くのは、スヴェイン、エフワズ、そしてアザト・コーヴァだった。
スヴェイン。エフワズ。アザト・コーヴァ。
「生きて…、よく…!」
思わず言葉がもれ、息も止まりそうな歓喜と感謝に目が潤む。

彼らは武装し、それぞれが一頭ずつ鞍を乗せた空馬を引いている。
当然のライゾもそこへ参加すべく樹を下りようとした瞬間、
何かが光った、と思う間もなく、手を掛けていた樹の幹に投擲用の
短剣が刺さった。
来るな。
そういうメッセージだと、瞬時にライゾは感じた。
その隙に、8騎はまたたく間に処刑場をすり抜ける。
が、最後尾のコーヴァが、小ぶりな革袋を刑場の端に落とした。
おそらくわざとだろう。拾えということか。
ライゾはすぐには樹を下りず、とりあえず本殿の門が見える位置まで
高い枝へ登った。

門前に到着した8騎は、堂々と馬を並べ、空馬の手綱どうしを結び合わせる。
門前の番兵たちは、彼らを大いに気にしながらも、誰も動かない。
外壁の周囲に等間隔で配置された兵たちもだ。
状況への対処を指示する者がいないのかとライゾは思ったが、そうではないようだ。
門を少しだけ開けて、中から指揮官らしい一人が、エルストラの方へ近づいていく。
どうやら彼女以外の顔を、誰も知らないらしい。
「エルストラ様、これは」
馬上のエルストラが音を立てて剣を抜く。同時に残りの3人もそれぞれに得物を
構えると、ようやく状況を理解したらしき兵士が声を上げた。
「総員!戦闘配置!」
叫んだ指揮官が最初の犠牲者となった。
嘶く馬の手綱を引き、エルストラは馬の前脚で門を蹴り開ける。
「どけどけ醜男ども!どかねぇとぶっ殺すぞ!」
集まった兵たちに戦闘隊形を形作る余裕はなく、指揮する者のない隊は
烏合の衆も同然であり、それは戦闘というより一方的な殺戮に見えた。
兵たちの足音、ぶつかる金属音、怒号や悲鳴が入り混じり戦場となった
双神殿。そこにペルスが用意していた兵員約300を相手に、4騎の精鋭は
その戦いぶり凄まじく、瞬く間に船上は本殿の中へと移りはじめている。
中でもライゾが初めて、その本気の剣技を見たエフワズとアザト・コーヴァ。
冷徹で理性的、完璧で容赦なく、一分の隙もない美しさ。
後ろ姿の太刀筋にも充分に見て取れる凄まじい戦闘力と演舞のようなしなやかさ。
ともすれば力で押し切ろうとする海賊の剣とはまったく違った呼吸を見せる、
黒と銀、二頭の獣にライゾは見惚れ憧れて、己の未熟さに恥じ入るほどの完成度
だった。
思えば搖神殿では幾度も手合わせしたエフワズ。
思っていたよりもずっと手加減されていたということがよくわかった。
けれど、先ほど刑場で見送ったエフワズの、何も見えていないような表情が
ライゾの熱を冷ます。
オースィラを失った彼の、察してあまるその絶望。
ライゾの存在がなければ、もう生きてはいなかっただろう固い背中が
哀れだった。

間もなく4人の姿が完全に本殿の中へ入って見えなくなると、ライゾは樹を下り、
コーヴァが落として行った革袋を拾い上げる。
中には茹でたピナ芋と焼いた鳥肉、果物と小さな塩の袋が入っていた。
待っている間に腹ごしらえをしておけということか。
よく見るとピナ芋にめり込ませた指輪がひとつ。即位以来使っていた印章の
指輪だ。黄金の太陽。大王ナシズの紋章にして、ライゾの紋章。
更に下に小さな走り書きが添えられている。
<あんたの印章を返す。禿鷲野郎が持ってた。>
それを再び指に収めると、不思議な感慨が胸に沸く。
せねばならない、と思っていた。王として、国と民への責務を果たそうと。
けれど気づいた。王であることそのものが、今の自分にとっての生きがいでも
あったのだと。
王として生きたい。もう一度人々に、王としての自分を受け入れてもらいたい。
ライゾは樹上に戻り、二日ぶりのまともな食物を口にした。
飢えていた体に染み渡るそれが、王でありたいと思う彼の気力を支え上げ
視線を彼方に据えさせる。

ふと、足元を逃げてゆく一人の兵士。
普通なら逃がしても構わないが、ペルスのもとへ知らせに行かれては困る。
ライゾは樹を下りようとした。刹那
「陛下!」
いきなり背中に強い衝撃を受け、座っていた枝から落下する。
まるで何かに突き落とされたように。
咄嗟に頭をかばって無意識に身体をひねり、頭を打つことはまぬがれたが
直後、ライゾは一瞬前ま立っていた樹が、根こそぎ倒れてくるのを見た。
というより、樹が大きく傾くのと落下するのがほぼ同時だったのだろう。
間に合わない。
だめだ。
思わず身体を丸めて頭を抱える。
が、続いた叫び声は自分が発したものではなかった。
背中をかすめるぎりぎりの位置に倒れた幹が押しつぶしたのは、逃げ去る
兵士に気を取られ、ライゾが気づいていなかったもうひとりの兵士。
その手に握られた剣が、ライゾに届く寸前のことだった。

「ライゾ様!」
ゆっくりと身を起こすと、駆け寄ってくるイングスの姿が見えた。
「ご無事ですか!?」
その毛深く太い手に抱え起こされ、知らず涙が頬を流れた。
その身は牢獄に汚れていても、眼光と逞しい体躯はいささかも衰えを知らず、
熊と見紛う頬髯も、底抜けに明るい表情も、ただ一点、右頬を縦に走った
傷跡のほかは、何も変わらない海の英雄。
「イングス、無事で」
「はい」
「イングス、イングス、」
昔と変わらず存在ごと抱き取ってくれる、海の香り。
「今、イェーラの、声がしたんだ、イングス、
陛下と、呼ぶ声が」
その腕にかきつき、堰切ったように声を上げて、ライゾは泣いた。
「イェーラだった!
あれは、イェーラの声だった!」
イングスはライゾを頭を抱きしめ、背中をさすりながら答える。
「もちろんですとも。あの子はいつも、どんなときでも
陛下のお側にいるはずです。」

いつの間にか神殿内の戦闘はおさまり、イングスの後ろに懐かしい顔たちが
揃っている。
エルストラ、エフワズ、スヴェイン、コーヴァ、北のロガフィエル、西のウルズ
そしてノーアトゥーン。
「皆、よく無事で…、コーヴァも、来てくれて、本当に」
「彼女のお陰で、私は陛下の義兄弟ですよ。」
大粒の黒い瞳を片方瞑って、コーヴァは笑った。
あのネツァークの鳥籠で、この黒豹のようなコーヴァを見たら
エルストラは何と言うだろうかと想像した。その答えを聞いた気がして、
ライゾも微笑む。
「スヴェインも、無事に逃げたと聞いていたが」
「はい、陛下」
武人らしい短い答えと、当然のようにそこに立つ誠心。ライゾはまた
泣きそうになった。
「ノーアトゥーン、傷は…」
それには本人よりエルストラが先に口を開いた。
「これぐらい平気さ。なんせこいつは父親なんだから。だろ?」
言いながら片手で彼の頭を軽く引き寄せ、髪に口づける。
ノーアトゥーンはキスを返し、ライゾに頷く。
「はい。エルストラさまは、私の娘の母親なんです。」
驚きを隠せないライゾに、エルストラは笑った。
「そんなに目を真ん丸くしなくてもいいだろ?あたしだって女の端くれなんだよ。
それに知ってるだろ?あたしは可愛い子のおねだりにはヨワいからね。」
「ずっと、家族がほしかったから。」
彼女が花御殿の少年たちに、仕事や住まい、時には花嫁を世話したり
昇殿の口添えなどをしていたのは知っていたが、まさかそんなことまで
という気もする反面、どこか彼女らしい気もした。
「その子は、今、どこに」
「マデインの谷に住む金細工師のところへ預けてる。
あたしは母親にはなれないが、こいつはここが終わったら、そこで娘と
暮らすんだって言ってるよ。」

「エルストラ」
抑揚のない金属的な声。
いつもと同じ、エフワズの声。
「ああ、はいはい分かってるよ。」
以前よりももっと白い、血の気のない顔。
毒にやられ、脱走し、オースィラを失い、ここにいる。
どう声を掛ければいいのか、わからない。
ライゾは、必死に声を絞った。
「…兄、上…、」
瞬間、全員が目を見開いて顔を見合わせる。
ライゾはその顔たちに頷いた。
「そうだ。エフワズは、俺の、今はもうたった一人の肉親なんだ…」
しばしあって、エルストラがライゾの頭を撫でる。
「そうかい。なら絶対に生き残らないとな。
そろそろグリームニルの広場に、人が集まり始めるよ。」




つづきます。




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夢の奥津城(黄金の太陽39回目)

テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

きたか。
予想はしていた。
立会人の一人もなく、早々に葬ってしまえば、後は病死とでも何とでも言える。
ライゾは静かに目を伏せた。
目の前の鉄扉ひとつなら、剣を奪い二人を倒し、枷を外して突破できたとしても、
単身で双神殿内の全衛兵をかいくぐる事はできない。
エルストラも間に合わなかったのなら、これまでか。

その時、向かって左に立つ兵士が抑揚のない声で言った。
「なぜ、笑うのですか」
言われて初めてライゾは気づいた。わななく手足と、笑みの形に歪んだ自分の
頬に。
「…ああ、そう、か…。きっと、嬉しいんだ。」
あの嵐の夜、エルストラが見透かしていたように。
「…イェーラに、会えるから。エルストラはもう、鍵を見つけた。
俺が、ここで死んでも、きっと、大丈夫だ。そしたら俺は、予言を破り
イェーラたちに、会える。」
「言い残すことは、それだけですか」
右側の兵士は少し感情的な声色だった。
ライゾは目を上げ、彼の顔を見た。仮面の中から滴る雫が、汗か涙かは
判らなかった。
「…嫌な仕事をさせて、すまない。誰も幸せに出来なくて、すまない。
あの日の誓いを、守れなくて…、おまえたちを、こんな場所へ連れて来て…
本当に悪かった。」
言葉を失った兵士たちに、ライゾは座ったまま頭を垂れた。
二人が同時に剣を抜く。

が、次の瞬間、右側の兵士がいきなり目を剥いた。
その唇が魚のようにぱくつく。何が起きたのか彼自身も知らぬまま、落ちた
視線の先に、自分の胸を突き破って出てくる切っ先が見える。
声も出せず、振り返ることもできない手が虚しく空を掻く間も、剣は無理やりに
肺を通過してゆく。
間もなく体が力を失って崩れ落ちると、左にいた兵士が剣を引き抜いた。
仮面を外した若い兵士は、床に倒れた同僚の腰から鍵束を掴み取る。
「逃げてください」
両手の鎖が外され音を立てて床に落ちると、急激に体が軽くなった気がした。

「おまえ、は」
「ノーアトゥーンです。お忘れですか」
思い出せないというより、全く覚えがない。
察した兵士は手早く遺体から衛兵の服を脱がせつつ言った。
「陛下に命を救われた者です。
4年前、船奴隷として囚われていたベルカナ船が沈んだ時、岸辺を目前に
沈みかけていた者たちを、イェーラ様と二人で何人も引き上げておいででした。」
言われて初めてライゾは思い出した。
懐かしい日。あの13歳の春。ソレイの巫女の予言により5歳で海に出された
ライゾが、晴れて神殿に帰参を許され港へ帰る途中、ベルカナの海賊船に
襲われたのだ。
仲間を見捨てられずに、イェーラの反対を押し切って敵船に乗り込み、
船底から奴隷の漕ぎ手たちを解放したのはよかったが、結局は自分たちの
船も沈んでしまい、どうにか岸まで泳ぎ着いた。
「あの、時の」
渡された衛兵の隊服を素早く着用しながら、ライゾは彼の顔を見直した。
が、やはり顔は思い出せない。
オーミ人かどうかに関わりなく、手の届く限りの者たちを救おうとしていた2人なら
ずっと信じていられると感じたと、彼は言った。

「ではこれはエルストラの」
答えながらノーアトゥーンは自分の腰に下げていた革袋の中身を手に取る。
「このことはまだエルストラ様はご存知ではありません。」
ということは彼女の配下には違いないが、ここは彼の緊急の判断ということか。
「陛下、失礼します」
革袋の中身は煤のようで、彼はそれをライゾの髪にまぶし、顔にも塗りつける。
「この塔を最下層まで降りた道具部屋の隅に抜け穴を作りました。
未完成ですが、なんとか出られます。」
そして目立つ金髪を黒く汚した上から、処刑人の黒い頭巾をかぶせる。
「見張りは」
「アルギス王の息子たる元国王の斬首ですよ。ユマラを畏れぬ所業です。
私たちが出て行くまで、当分は誰も本殿から出てきません。」
ノーアトゥーンはさっき遺体から抜いた剣の、血糊を服で拭ってライゾに
渡した。
「行ってください、お早く」

エルストラが動くのは死者の日の夜明け。事が早すぎれば朝から始まる広場の
儀式は中止され、遅すぎればオーミは一巻の終わりだ。
死神たちの祝宴が、何が起ころうと催行するしかなくなったぎりぎりの時間を
狙って計画は定められているだろう。
それまであと二日。生き延びなければ。
「ありがとう、ノーアトゥーン。行こう」
けれど鉄扉に向かうライゾに付いてこないノーアトゥーンに、ライゾはぎくりと
立ち止まる。
残って時間を稼ごうというのか。
けれど、それでは彼が殺されるだろう。
その覚悟を悟ってライゾは彼の元へ駆け戻り、勢い強く抱擁した。
「おまえを覚えていない。なのに命がけで助けてくれる、おまえを殺させたくない。
だから、許してくれ」
そして床の手枷を拾い上げると、彼の手首にそれをはめ、彼に向かって
剣を構えた。
傷が浅すぎては怪しまれるだろう。けれど、失血死するほど深くても駄目だ。
「ノーアトゥーン、後ろを向いてくれ。」
目の前を閃く剣に反射的に彼の体がぶれてしまっては目測を誤ることになる。
黙ってうなずき、ノーアトゥーンはライゾに背中を向けた。
「俺を信じてくれてありがとう、ノーアトゥーン。感謝する、心から。」
疑いも苦しみも、しなかったはずがない。
二人の王と信仰に挟まれ、同僚を手にかける究極の選択を迫られれば、
悩まない者はないだろう。
その懊悩の末に、それでも自分を信じてくれた。
「無事でいてくれ」
「陛下こそ。」

ソウェルの登極の式典が完了するころまでは生かされるだろうとの
予想を覆し、早々に出された暗殺指令。
日が昇れば追手もかかる。
これがエルストラも知らない事態であるからには、彼女は予定通り
死者の日の朝にここへ来るかもしれない。
ライゾの逃亡が知らされた時点で、それ以外に合流の方法がないからだ。
2日間、逃げ切って再びここへ戻ってくる。
抜け穴から地上へ這い出せば、双神殿に監禁されてほぼ3ヶ月ぶりの外気。
その真夜中。目を眇めて見上げれば、風にそよぐ木の葉が月光を受けて
銀色に光っている。
満月まであと二日。いっそこの樹の下で、永劫の眠りについてしまいたいような
衝動をこらえ、ライゾは森の柔らかな夜気の中、アトリの山の方へと駆け出した。

ライゾ暗殺指令、そして脱走の報を受け、エルストラは座っていた椅子を
蹴り壊した。
ノーアトゥーンはライゾを逃がした咎でそのまま地下牢に囚われた。
けれどエルストラはまだ彼を救い出しに行くわけにも、ライゾに向けられた
ペルスの追手を阻むこともできない。
追手の中に息がかりの元近衛隊士をひとり、混ぜ込むのが精一杯だった。
ここまできたら、もうあとはライゾを信じて祈るのみだ。
これまで表では世界王の騎士として働き、裏ではなれない水面下の工作に
一時も休むことなく奔走し続けたエルストラが、すべての用意を終えて
ようやくまともに眠った、死者の日前日。
それでも、疲れきって横たわった寝台の中でさえ、彼女の心には冷たい寂寥感が
降り積もる。

ライゾが捕らわれたという知らせはなく、死体が見つかったとも聞いていない。
なら彼は生きている。そして明日の朝、必ずもう一度、双神殿に現れる。
そう信じている。
なのに不安が拭えない。嵐の夜以来、胸に抱えた言い知れぬ不安。
あの夜と同じ冷えた風が今も体の中を吹き荒れ、あの時の玲瓏としたライゾの
瞳を思うたび、哀憐ばかりが音もなく、染み入るように胸を浸す。
必ずうまくいくはずだと己を鼓舞しながらも、胸苦しさに寝返りを繰り返し
静寂のとめどない切なさに、なぜか心が独りでに啾々とむせび泣いた夜。
夜明けはあまりに早すぎた。




つづきます。




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「明治吸血奇譚 月夜叉 霜月の巻 レイガ」の感想です。ネタバレあり

テーマ:乙女系CD - ジャンル:サブカル

月夜叉レイガ

装丁がちょっと変わってて綺麗なシリーズです。
やや大きめの紙ジャケなんですが、開くと満月の形のカードが入ってて
それを切込みから抜くと、そこにディスクが入ってます。

神無月の霧乃助もすっごいよかったので感想書きたいんですが、んでもコレ!
今回すっごくすっっごいカッコよかったんですそれがもう聞いて下さいよ!!

下野紘さんの声イメージがちょっと変わりました!
2枚組みでボリュームありますが全然退屈しないシナリオですし
カッコイイやら可愛いやら・・・!ジタバタしたくなりましたよ!!

明治舞台ですが難しいセリフとか知らないと困る設定などもありません。


以下ネタバレです。
2枚組みなので長いです。




ある日、霧乃助に拉致られ黎明館に連れてこられた彼女。
卑弥呼の血を受け継ぐ最後の子孫である彼女は、そこに住む6人の
夜叉たちにとっては一般人数百人にも値する重要な食糧なのだそうです。

レイガはアイヌ出身で倭人に恨みを持ち白い狼カムイと話せる人です。
  そういえばアイヌのルーツはイヌイットだとか聞いたことがありますが。
  そら大和民族といえば大和朝廷の昔から、少数相手にはロクなことしてない
  ですからねぇ。それこそ卑弥呼の時代から漢の倭の奴の国王ってだけは
  あるというか…。

なのでレイガは彼女に冷たく、事情を聞かれても面倒くささが先にきます。
「俺以外の奴をつかまえて聞け」

館を逃げ出そうとした彼女が2階の窓から落ちるのを冷静に目視。
探すほうが面倒だからとカムイに諭され捕まえに行く始末。
「てめぇが逃げたら」「他の人間が何百と死ぬぜ」
「夜叉ってのは」「生き血を吸って生きる」
「ヒトでもケモノでもない生き物だ」
「俺は」「倭人の血なんてお断りだ」

  自己犠牲とお人好しはこのテのCDのヒロインには必携のアイテムですが、
  今回の彼女も館に留まることを仕方なく受け入れるようです。
  美肌と美髪、気遣い、受け身が3種の神器に見えてきます。

彼女の血の匂いに惹かれつつも、その血を拒み狩ったイノシシや動物の血で
渇きを紛らわすレイガ。
イノシシを台所に運んで彼女と鉢合わせたレイガは割れた食器で
怪我をした彼女の血に理性を奪われ吸血衝動に駆られます。
  ってさっきイノシシの血ぃ吸ってた時も思ったんですが、
「一滴残さず」「吸い取ってやる」
  はうぁっ・・!ワイルド・・・!!
  こんな動物みたいな声出す方でしたっけ!?
  野生的で衝動的でめっちゃセクスィー・・・!!
  精悍というよりもっと泥臭く、ケモノというよりケダモノ。でも心身ともに人型の
  パーツを感じさせる、ストイックな欲望とでもいいましょうか。・・・イイ!!  

  霧乃助さん近藤隆さんはさすがに血ぃ吸い慣れてる感あったんですよ。
  同じ吸血リップ音でも赤い目の末っ子とはキャラの違いが歴然としてて
  すごいと思いましたが。 

我に返ると失血死しかけてる彼女を部屋に運んで看病するレイガ。
野菜を欲しがっていた彼女のために、焼いた肉とその辺で摘んできた野草を
溶けるまで煮た緑色のスープを持ってきてくれます。
  すごいな彼女食べてるよ!

でも吸いたくて吸ったわけじゃないという彼の苦しさを受け入れ、
次第に恐れを消していく彼女。
元気なった彼女はレイガへのお礼に彼の好物を知るため、彼の故郷を
捜そうとするも、他の夜叉(操)に騙されて遭難しかける。
  このシリーズちょっと特徴的なのが、彼女の言動を彼のモノローグ形で
  読んでくれるんですよね。
  確かに鸚鵡返しで彼女のセリフを表現するよりは自然な感じですし、
  ついでに彼の心の動きもよく表れるので、いい方法だなーと思います。

けれどレイガの故郷カムイコタンでは、化け物扱いだったという彼。
雪の中、彼女を連れて飛ぶように館へ戻る途中、
高い樹の上に彼女を運び美しい景色をしばし共に眺める2人。
「礼だ」「俺の好物を知ろうとした」

バランスを崩した彼女と樹から落下したレイガ。うっかりかすめる2人の唇。
  いやそれ事故ってか彼女、不可抗力のさなかに狙うところはきっちり狙ってないですか?
「黙るんじゃねぇよ!何か言えよ!」
  この辺は低音ながらもいつもの下野さんの可愛い演技が満載です。

そんな彼の好物はキャンデーだそうです。
操は持ってても分けてくれないので、彼女は町で買い物するついでに
彼にぶどう味やみかん味のキャンデーの入手方法を説明しようとします。
「言っておくが」「たまたま、気が向いたから行くんだ」
  霧乃助のあんぱんに続きキャンデー。
  やはり夜叉にも血糖値は重要なんでしょうか。

町で人ごみを歩きにくそうなレイガ。彼女が手をつなぐと緊張しまくるレイガ。
飴細工に食いつきカムイ型を依頼。待ってる間は詰め放題に一直線。
   そういえば、大阪人はもれなく飴をアメちゃんと呼びます。
   ヤクザみたいなおっちゃんでも幼稚園児でも、病院の受付などにあるカゴから
   「アメちゃん1コもらうで」と言って取っていきます。

 
キャンデーの礼がしたいという彼に、名前を呼んでほしいという彼女。
発音が難しいからと、花を意味するノンノというあだ名を提案。
故郷にある、彼女と同じ匂いのする花。
  彼女の名前、何語なんだ・・・。

ここまでディスク1です。


以降ディスク2です。

鹿が獲れたと台所に運んできたレイガ。
料理している彼女に対しても以前よりかなり優しくなりました。
2人で町に行ったとき、見かけた祭りの屋台のすき焼き。
火を通した肉や野菜はまずいと信じているレイガに味見させると
ネコまっしぐらの食いつきです。
「それじゃ、この前俺が作ったのは」
「よくあれ食ったな」「嬉しかった?」
「人と食事をしたのは久しぶりだ」「礼なんか言う奴も」


後日、イノシシ鍋の昼食を再び彼女と囲んだレイガ。
カムイに釘を刺されるほど彼女と親しくなってきてます。
  いやカムイは「ブルルルー」しか言いませんが。
言われてレイガは再び彼女と距離を置こうとします。
「ノンノの血は」「夜叉を狂わせる」
「人と仲良くなって、そいつを手にかけるのなんて
二度と御免だ」


けれど彼女から離れようとした矢先、彼女はレイガに復讐を企てる
カムイコタンの者たちに襲撃されます。
「悪い」「俺の問題に巻き込んだ」

捨て子だったレイガはカムイに育てられ、神獣の子として祀られながらも
誰からも構ってもらえない孤独な生活を余儀なくされました。
たった一人、狼には教えられないことを教えてくれた親友は首長の息子。
けれど獲物が獲れない日が続き、血に渇いて満月に狂ったレイガ。
「気がついたら、あいつの血を必死で吸ってた」
「何も覚えてねぇんだよ」「ただ呆然としてた」

  この辺さすがに聴かせてくれます。思わず停止して聴き入りました。

カムイコタンにいられなくなり、夜叉の館だと言われていた黎明館を訪れ、
幻斗に出合って居場所を得たレイガ。
黎明館を守るために出て行くことを決断します。
「泣くなよ」「大切なやつを失いたくねえんだ」
「判れよ…!」

  ここんとこ!この「判れよ」がめっちゃくるくる!

それでもレイガについて行くことを譲らない彼女。
レイガは彼女が疲れたところでカムイに預けて置いていこうと計画。

けれどカムイコタンの人々は館を出て間もない2人を襲撃。
倭人を憎むはずのアイヌが倭人の鉄砲を使っていることに悲憤するレイガ。
「俺を!化け物って言うんじゃねえ!」
「あいつを殺したくなんてなかった!」
「やっと見つけた」「居場所を奪うな!」

  更にここんとこ!引き続きかなーりきました!
  引き絞るような慟哭と、吹雪の中を飛び交う銃弾。
  いやまあ鉄砲ってこんな音じゃない気もしますがそこはドラマ優先で。
  殺す者と殺される者、背負う怨嗟は同じく重く。

撃たれて倒れたレイガのそばに駆けつける彼女。
手を握り締める彼女の、顔ももう見えないレイガ。
《一度も俺を怖がらなかった》
《好きになるに、決まってんだろ》

  やっぱりモノローグを読むってすごい効果的ですね~。

カムイに運ばれ、どうにか一命を取り留めたレイガ。
満月に目覚めると彼女に血を求め、彼女も了承したようです。
  あ!吸血リップ音ワイルド入ったまま人間っぽくなった!すごい!
  何をどう変えてるのかはわかりませんが、動物衝動+恋情吸血に
  すっごいなってますよ!?ステキ過ぎます!!
  でもそれちょーっと失血多くないですか?

「大丈夫か!?悪い、吸い過ぎた」
  あ、戻りましたね。お帰り。

  ふ~、思いがけなく殺された首長の息子は哀れですが、助かってよかったね。

キャストトークでは、大柄なキャラ役は珍しく、吸血シーンも頑張られたとのこと。

ええそりゃもう聴かせていただきましたよ!
可愛いのに骨太いって、ほかでは聞けない声技だと思います!
シナリオも明解でシンプルながらしっかり組まれてて、気持ちの流れが
よく見えて感情移入しやすく、楽しかったです。
次の師走の巻も楽しみにしてます!

長々とお付き合い、ありがとうございました!



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プロフィール

シカピ

Author:シカピ
数年前、とある美声にひと耳惚れし、
そのまま声フェチに、そして
ヤンデレに行き着きました。
同じ道を通った人、いますか?

真冬以外は年中花粉症です。

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